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◆雑多集
未来を視る者2
―三日後―


ザアザアと音を立てて雨が降る朝。
早朝の新聞に大学生がひき逃げされたという記事が掲載された。
顔写真を見ると公園で会ったあの男。

岩崎 昇
(いわさき のぼる)

××大学四回生 二十一歳


岩崎 昇……か。
やはり、忠告は無駄になってしまったようだ……

俺は、持っていた新聞をバサリとテーブルに放り投げ、身支度を整えた。




外に出ると、ぱたぱたぱたと雫が顔にかかる。
俺は持って出てきた黒い傘を差し歩き始めた。

バラバラと傘に当たるメロディーを聞きながら、あの時に見た映像を思い出す。



岩崎 昇が亡くなった時の雨は、この雨より激しくて、傘を差しているにも関わらず、靴から衣服まで酷く濡れてしまっていた。
特に足元のスニーカーは随分と水を含んでしまっているのだろう、歩くたびにずちゃずちゃと音がしている。

夜も遅い時間なのか、辺りの家々は既に電気が消え、暗闇にポツリ、ポツリと外灯が照らし出されていた。
数十メートル先の外灯に至っては、今にも命の灯火が消えるかの如くチカチカと点滅を繰り返している。

暫くすると、背後から車のエンジン音が近づいてきた。
ヘッドライトが辺りを照らし出す。
岩崎さんが、今歩いている場所よりも更に端の方へと寄ると、車は岩崎さんの横を通り過ぎ、先の十字路でUターンをした。

――そして、岩崎さんに向かって走ってきた。

岩崎さんの歩みが止まる。
車のライトが煌々と岩崎さんを照らし、車は徐々にスピードを上げ迫ってきた。

ドンッ!!

と、いう音と共に、岩崎さんの視界がぐるりと反転し、ライトに照らされた雨の粒が黄色い光となって、岩崎さんに落ちてくる。

差していた傘が、点滅している外灯の下まで飛び、青みがかった光に照らされては、消え、また照らされ、……消えた。




俺は、自分でも気づかないうちに歩みを止めていたらしい。
岩崎さんと会った公園の入り口で立っていた。

公園の柱時計に目をやると、既に登校時間を過ぎている。
完全に遅刻だ。

俺は、しばらく時計と睨めっこした後、来た道を引き返す。
足は、岩崎さんの事故現場の方向へと進める事にした。

何がそうさせるのかは、自分でも判らない。
ただ、あの人は少し変わった人だったから……






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あきゅろす。
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