◆雑多集
囚われの彼女
空はあんなに澄んで綺麗なのに、私はけして外には出られない。
薄暗い室内から、眩いばかりの外界を眺めるだけ。
どうして、私はここに捕らえられているのだろう。
主人の為に子を産み、その子さえ主人に奪われる。
自由に動く事すらままならない。
こんな理不尽な世界に私はずっと住んでいる。
ある日、見慣れない男が部屋に入ってきた。
男は、私と目が合うとにっこりと微笑んでくれる。
私を世話する人達は、いつも無表情で、私に笑いかける人なんて誰一人としていなかった。
主人さえ、私に笑いかけてはくれない。
なのに彼は、微笑み、「元気か?」と気遣ってくれる。
私の心が、彼に奪われてしまうのは、ある意味仕方のない事。
誰も、こんな風に優しくはしてくれなかったから。
それから毎日、私は彼の訪れを心待ちにしている。
彼が来てくれた時だけ、私の暗かった心は、あの青い空に負けないぐらい輝きを放つ。
なんの自由も無い所だけど、彼に出会えた事で、ここに閉じ込められた事に少し感謝している。
いつか、私の気持ちを彼に伝えれたらいいな……
→彼女の正体は次で判明
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