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◆雑多集
未来を視る者1
プロローグ

灰色のカーテンが幾重にも重なり合っているような空模様の中、俺は帰路に着くため通学路でもある公園を足早に歩いていた。
明日も学校があるので、制服が雨にでも濡れると厄介だ。

俺が急ぎ歩き進む向かいから、カップルらしき大学生ぐらいの男性と女性が楽しそうな様子で歩いてくるのが視界に映った。


――またか


彼らとすれ違った瞬間、頭をギリギリと締め付けられるような痛みに、俺はその場に座り込んだ。

あまりの酷い痛みに吐き気がする。

「おいっ、大丈夫か!?」

慌てながら声を掛けてきたこの男……


雨が降り注ぐ暗い夜道の中、車に撥ねられ死亡するようだ。


男は、心配そうな表情を顔一面に広げ、俺の肩にそっと手を置いた。

「――大丈夫」

「ほ、本当に大丈夫なのか?顔色かなり悪いぞ?……汗も酷いな」

男は自分のジャケットから、清潔感漂うブルーのチェック柄のハンカチを取り出し、俺に差し出した。

「これ、よかったら使ってくれな」

初対面の俺に優しく接してくるこの男は“いい人”なのだろう。
出来れば、そんなこと知りたくもなかったが……。

俺は男が差し出すハンカチを受け取らず、頭痛を振り払うように立ち上がった。

おそらく、無駄になるだろうが……

「――夜道の車に気をつけたほうがいいですよ」

俺の言葉に、男は一瞬、困惑したような表情を浮かべチラリと隣の女性を見たが、直ぐに微笑みながら「ああ」と、返事を返した。

変わった人だ。 
普通、こんな事を言われれば気味が悪いだろうに。

「貴方、何を言って……」

女性が奇妙なモノでも見るような目で俺を凝視している。

これが当然のリアクション。

俺は、これ以上関わらないように無言で男達に背を向けその場を離れた。





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