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◆一輪の花?(エムペ版)
A


授業終了のチャイムが鳴り響く中、下駄箱で靴を履き替える斉藤先輩の姿を見つけた。

「斉藤先輩!」

声を掛けると、斉藤先輩は表情のない顔でこちらを見る。

「幸田か。何か用か?」

「さっき、尾崎と龍巳……じゃなくて、若林と話していましたよね?」

「ああ」

斉藤先輩の周囲を見回すが、二人の姿は見えない。

「あの、二人は何処に行ったんですか?」

俺の問いに斉藤先輩は「若林なら」と、俺の背後に視線を移した。

「ここにいるけど?」

聞き覚えのある声の方へ俺は身体ごと振り返る。

そこには龍巳が「よっ!」と、片手を上げて微笑んでいた。

「龍巳ぃ!! 何処に行ってたんだよ! よくも、尾崎の事、黙ってやがったな! いや、それよりも尾崎はっ!?」

胸倉を掴む勢いでまくし立てる俺に、龍巳はたじろぎながらも、笑顔を崩さず指を天井に差す。

「凛なら、屋上だよ」




爽やかな風が、頬を撫で、学校特有の喧騒を運んでくる。

「……はい、確認できました。どうやら、授業も終了したみたいですので、警護の方、宜しくお願いします」

私は、耳に当てていた携帯電話離し、通話終了ボタンを押した。

ピッと、電子音が鳴り、通話画面からカレンダーの待ち受け画面に切り替わる。

とりあえず、これで仲間の顔と場所は確認できた……と。

画面に表示されている時間が、私の目に映る。

結局、授業に出られなかったな。

まぁ、幸田君と顔合わせるのも少し気まずかったりするんだけど――そうも、言ってられない。

仕事に私情は厳禁だ。

私は、軽くため息を吐きながら、手すりに背中を預けもたれかかり空を見上げる。

昨日とは、うって変わっての快晴の空が眩しい。

目を閉じれば目蓋越しに感じる太陽の光。

肺の深いところまで空気を取り入れるようにして深呼吸をしてみれば、しぼんでいた心が、ほんの少し膨らんだような気がした。

「よし、頑張ろう」

自分に言い聞かせるように呟き、屋上の扉に向かおうと足を進める。

数歩進んだ所で、鈍い金属音が屋上に響いた。

私の歩みは自然と止まり、思いがけない人物の登場に驚く。

屋上の入り口には、肩を激しく上下させている幸田君の姿があったからだ。




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