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◆一輪の花?(エムペ版)
すれ違い



自室へと続く廊下を歩いていると、行く先に数時間前にも会った八木さんの姿があった。

先程とは違い、サングラスは外され、服装もスーツから寮の清掃員の制服に変わっている。

八木さんは、私に気付くと背筋を伸ばし折り目正しく一礼した。

「お疲れ様でした。後は我々で監視を引き受けます」

「どういう」

ことですか?と、問いかける前に、八木さんは私と視線の高さが同じになるように身体を屈める。

「今日は、ゆっくり休めと、朔様からの伝言です」

「……それ本当に兄貴が?」

訝しむ私を見て、八木さんは小さく口元を緩めた。

「さようでございます。口には出されておりませんでしたが、凛様の事を心配なさってるようでしたよ」

任務中の私に兄が“休め”と、指示を出してきたのは、初めてだ。

先刻、幸田君を探し出す為に、兄に連絡を入れ、今回のミッションの為に設置した監視カメラの映像を分析してもらった。

屋上にも監視カメラが付いていた筈だから……一部始終を聞かれていたのかもしれない。

気を遣わせてしまったな――

「そうですか……判りました。後は、お任せいたします」

八木さんは「お任せください」と、一礼し足早に去っていく姿を見送ってから、私も部屋へと足を進めた。




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