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◆一輪の花?(エムペ版)
苛立ち



公園の入り口付近の脇道に、先刻の現場からも確認できた白いワンボックスカーが停車していた。

私が車の元まで行くと、スライド式のドアが開く。

そのまま車内に入ると、シートに踏ん反り返るように座る兄がタオルを投げ寄こしてきた。

「無事か?」

「ターゲットは無事だよ。怪我もない」

兄の向かいのシートに座り、自分に纏わりつく水分をタオルで拭き取りながら、報告する。

「お前は?」

思いがけない兄の言葉に、私の手が止まる。

「兄貴が、仕事中の私の身体を気遣うなんて珍しいわね」

いつもなら、人権という単語は、兄の中には存在しないのではないかと思えるほど、人使いが荒いというのに……もしかして、なにか企んでるとか?

疑心の眼差しを兄に向ける。

「心外だな。俺はいつだって、可愛い妹を心配しているぞ?」

兄は、抑揚のない声で、作り笑いを浮かべた。

凄く馬鹿にされてるような気分になるのは何故だろう。

まあ、兄の人を小馬鹿にしたような態度は、今に始まったわけではないのだけど……

「朔様」

サングラスをかけた強面の男が助手席から振り返り声を掛けてきた。

兄の秘書を勤めている八木さんだ。

「なんだ?」

兄は、目線一つ動かさず返事をする。

「先程の連中の事なのですが……彼等を雇った人物は、本人達にも判らないそうです。三日前、連中のリーダーの元に、キャッシュで前金十万と、指示が書かれた手紙が届けられたそうで、彼等はあくまでその指示に従っただけのようですね」

「つまり、黒幕は判らないって事か……ターゲットの受け渡し場所は?」

「S町の廃墟となっているビルだそうです。これが指示の書かれた手紙です」

八木さんが、ごつごつと節くれた手で、一枚の紙を差し出した。




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