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◆一輪の花?(エムペ版)
G


「尾崎君! 幸田君!」

足元の小さな水溜りを踏みつけ、美咲先輩を先頭に秋月会長、斉藤先輩がこちらに走ってくる。

「美咲先輩に、秋月会長、斉藤先輩まで……」

三人とも、肩が大きく上下している……

ここまで、走って来たのだろうか。

「流石に、見事なモノだね」

美咲先輩は、乱れた髪をかき上げ地面に転がっている連中を見ながら、感嘆の声をもらした。

「凛君、凄いねー! めっちゃ強いじゃん!!」

嬉々とした秋月会長に手を握られ、尾崎は曖昧な笑顔で笑う。

「二人共、怪我は?」

斉藤先輩が相変わらずの無表情で口を開いた。

「幸田君も、僕も無傷ですよ」

尾崎は、おもむろにブレザーを脱ぎ、ベスト姿になると、俺の頭に脱いだブレザーを被せた。

ふうわりと、微かな温もりが俺を包み、甘くて優しい匂いが鼻をくすぐる。

「……尾崎?」

「もう、遅いかもしれないけど、雨避けに使って。無いよりはマシだと思うから」

そういいながら、微笑する尾崎に一瞬見とれつつも、直ぐに我に返った。

「何言ってんだよ! 尾崎が濡れるだろ!! 風邪引くぞっ!!」

頭上に載せられたブレザーを返そうとする俺の手を、尾崎はやんわりと掴む。

少し冷えた柔らかな手に少し力を入れながら、尾崎は俺の顔を覗きこむようにして見上げてきた。

「僕は大丈夫だよ。結構、身体頑丈だし。それに僕より幸田君の方が大切だからね」

一瞬にして、顔に熱が集まってくる。

俺が大切って……尾崎って、さらっと恥ずかしい事を言うよな。

「あ、あのなあ、頑丈とか、そう言う問題じゃないだろ。た、大切に思ってくれるのは嬉しいけど、もっと自分の事をだな……」

「あー、はいはーい」

俺と尾崎の間に、秋月会長が締りのない顔をしながら割り込んできた。

「とりあえず、皆してずぶ濡れのままってのも、なんだから、寮に戻らない?」

秋月会長は自身の上着を凛に被せながら、提案する。

尾崎は、慌てて上着を返そうとするが「いいから」と、秋月会長に促され、恐縮するように「ありがとうございます」と、小さな声でお礼を言った。

そんな光景に、俺は、胸の奥にもやっとしたモノを感じる。

「それもそうですね。このままだと、本当に風邪を引きかねませんし」

美咲先輩は秋月会長の提案に賛同するように頷いた。

斉藤先輩も、静かに顔を縦に振る。

「あ、えっと、皆さんは先に寮に戻ってて下さい」

尾崎は、突然そう言うと、美咲先輩に何かを耳打ちし、走り出す。

「あ、おい、尾崎!?」

「直ぐ戻るから」

尾崎は走りながら「また後で」と、手を振る。

強まる雨脚に、尾崎の姿はあっという間に見えなくなっていった。




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あきゅろす。
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