◆一輪の花?(エムペ版) D ◆ 生暖かい風が吹くたびに、周りの木々の葉擦れの音が聞こえる。 そんな中、急ぎ足で寮へ向かう俺の顔にポツポツと、冷たいものが降り掛かってきた。 「あぁー、もう降り出してきたよ」 天気予報の嘘吐きめ! 雫を落とす空を忌々しく見上げる。 今朝、干してきたシーツが雨に濡れては、折角の早起きも台無しになってしまう。 しかも、自分のシーツだけならまだしも、最近転校してきた、尾崎のシーツも一緒だ。 「早く取り込まないと……」 俺は、急ぎ足を更に早めて、半分走るように寮へと続く道を進む。 近道でもある公園の中を突き進んでいると、六人の男達が、俺の行く先を妨害するかのように立ちはだかっていた。 だぼついた衣服に、身体のあちこちに付けられているピアスやタトゥー。 髪の色も様々で、見るからに、性質が悪そうだ。 「そんなに急いでドコにいくの?」 その中の一人が、ニヤついた顔で話しかけてきた。 俺は、男の言葉を無視し、足早にそこを立ち去ろうとしたが、数人の男達が俺を取り囲む。 「無視するなんて酷いなぁ」 男はピアスの付いた口の端を吊り上げ嘲笑う。 俺よりも身長が高い奴ばかりで、異様に威圧感がある。 「なんの用だよ。言っとくけど、金なら持ってないぞ」 こういう奴等は、弱気な所見せると、つけ上がる。 内心ヒヤヒヤしながらも、声のトーンを下げ、男を睨み付けながら言った。 とうとう本降りになった雨が、俺達の身体を徐々に濡らしていく。 口ピアスの男は鬱陶しそうに金色に近い髪をかき上げた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |