◆一輪の花?(エムペ版) C 生徒会室に近づくにつれて、何かが聞こえてくる。 人の声のようだが――怒鳴り声? 私が生徒会室のドアの前に立った時、その声が鮮明に耳に届いた。 「なんで、一人で行かせたんですかっ!!」 この声は、美咲先輩? 普段、冷静沈着な美咲先輩でも怒鳴ったりするんだなあ。 「おいおい、何をそんなに怒ってんだよー。たかが、寮に戻っただけだろ?」 秋月先輩の困惑を含んだ声も聞こえてくる。 「――っもういいです!! 急いで、幸田君を追いかけなければ……」 ……は?幸田君? 今、秋月先輩が寮に戻ったって―― 扉が開く音と共に、私は美咲先輩と対面する形になる。 「とっ、尾崎君」 美咲先輩は目を軽く見開き、部屋を出て行こうとした足を止めた。 そんな、美咲先輩のブレザーをガッシリと両手で掴むと、私は詰め寄るように口を開いた。 「美咲先輩、もしかして、幸田君一人で寮に?」 「ああ、‘雨が降りそうだから、シーツを取り込む’て、言ってな」 私の問いに答えたのは、美咲先輩を追いかけようとしていたのか、美咲先輩のすぐ背後に居た秋月先輩だ。 幸田君が一人で寮に戻って行った。 その事実に心臓がドクリと波打つ。 ざわつく気持ちを振り切るように、私はその場を走り出していた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |