◆一輪の花?(エムペ版)
A
放課後だけあって保健室には生徒の姿もなく、五十嵐さんは、ゆったりと椅子に腰掛けていた。
「よお、待っとったでー」
「で、何の用ですか?」
笑顔で出迎えた五十嵐さんとは正反対に、私はぶっきらぼうに口を開いた。
さっさと用件を終わらせて、この場から立ち去りたい。
「そない、ふて腐れた顔せんでもええやんか。可愛い顔が台無しやで?」
五十嵐さんはククっと笑いながら、おもむろに立ち上がり、私との間合いを詰めてくる。
この男は、何故無闇に近付いて来るんだろう。
頼むから、近付かないで欲しい。
五十嵐さんが一歩近付く度に、私も一歩後ずさりをする。
そんな事を繰り返している内に、とうとう冷たい壁に阻まれてしまった。
五十嵐さんは、私を追い詰めると、何処か楽しげに私の耳元で囁く。
「まあ、凛は、どんな表情していても、そそるんやけどなあ」
眼鏡越しに見える目が、憎たらしく見えるぐらいに嬉しそうに細められている。
――でたよ、セクハラ発言。
相変わらずの変態だ。そしてエロ魔人だ。
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