◆一輪の花?(エムペ版)
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「尾崎! そいつらを甘やかすなよ!!」
ずかずかと尾崎の元まで行き、尾崎の肩に置いてある筒井の手を払ってやる。
「いって! なにすんだよ圭一!」
「お前達の魂胆は丸みえなんだよ。尾崎は優しいからな。泣きつけば宿題見せてもらえると思ってんだろうが」
「ああ、思ってるさ! 何が悪い!!」
「逆ギレかよ!」
開き直った筒井と、不毛な言い争いに発展しかかりそうなった時、パンと、乾いた音がした。
「二人とも落ち着いて」
音の出所は尾崎のようで、苦笑しながら俺達の間に割って入ってくる。
未だ九条が足に縋り付いているので、若干動きづらそうだ。
「ほら、言い合いしてる分、時間過ぎちゃうよ? 僕でよかったら判らない所教えるから、ギリギリまで頑張ろうよ。ね?」
尾崎は、筒井と九条が不承不承といった態で、頷くのを確認してから、俺の方へと振り返った。
「これなら、いいよね?」
俺と然程、目線が変わらない尾崎に伺うような視線を向けられる。
「仕方ないな」
なんて答えながらも、最初からそのつもりだったんだけど――尾崎に先を越されてしまったな。
「尾崎って、見た目クールビューティで近寄り難いけど、勉強みてくれるし、いい奴だよな」
九条はようやく立ち上がり、尾崎を見下ろしながら爽やかな笑顔を向ける。
こいつ等の目にも、尾崎は美人に見えてるんだな。
尾崎は、一瞬驚いた様子を見せたが、直ぐに柔和に微笑んだ。
「僕から言い出だしたのは、あのままだと時間掛かりそうだと思ったからだよ。多分、最初から幸田君も、勉強教えるつもりだったと思うよ?」
「そうなのか?」と、筒井と九条が俺を見下ろしてくる。
そんな風に言われると、恥ずかしいというか、照れるというか……
「ほら、時間ないぞ。ノート持って来いよ」
ぶっきら棒に言いながら、自分の席へと向かう。
背中に向けらてるであろう視線が、なんだか少し腹が立つ。
あいつ等の事だ、絶対にニヤニヤ笑ってるはず。
――でも、尾崎が俺の気持ちに気付いてくれたことは、なんだか俺のことを理解してくれているようで、素直に嬉しいと思えた。
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