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◆一輪の花?(エムペ版)
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教室に足を踏み入れると、クラスメイトの九条と筒井が、声を掛けてきた。

こいつ等が猫撫で声で、へらへら笑っているって事は、昨日出された数学の宿題を見せろってところか。

「圭一、俺達親友だよな?」

サッカー部に在籍する九条は、こざっぱりした髪を照れくさそうに掻きながら、俺の左腕を掴む。

「一応な」

「親友の頼み事聞いてくれるよな?」

九条と同じサッカー部の筒井が、俺の右腕を掴み、そのまま近くの椅子に強制的に座らせられた。

俺が逃げ出さないようにするためなのだろう。

「頼み事によるぞ」

必死な形相で俺を覗き込んでくる二人は、友人とはいえど少し怖い。

こいつら目が血走ってるやがる。

「今日、数学の宿題の提出日だろ。圭一の事だから、ちゃんと宿題してきてるよな?」

俺の左肩を掴み、顔を近づけてくる九条から思わず身体を引きつつも「まあな」と、答える。

すると筒井が俺の右肩を掴んできた。

「俺達、昨日部活でしごかれちゃってさ、宿題まで気力回んなかったんだよ」

筒井までもが、俺に顔を近づけてくる。

俺の背中には椅子の背がピタリとくっ付いている為これ以上逃げ場はない。

『見せてくれるよな?』

二人の声が綺麗にハモった。

「見せねーよ」

毎度毎度、同じやり方で迫ってくる二人に呆れながら、溜息をつく。

「なぁーにぃ? 親友の頼みごとが聞けねーってことか!?」

「あのな、親友だからこそ見せないっていってるんだよ。てか、筒井、言葉文句が脅し入ってんぞ。親友脅すんじゃねーよ」

「尾崎ぃー! 圭一が意地悪言うよぉー!」

九条がデカイ図体を折り曲げ、尾崎の足元にすがり泣きまねをしている。

その光景は見るからに鬱陶しい。

「九条君。幸田君は、けして意地悪を言ってるんじゃないよ。宿題は、授業でやった箇所の復習だから、自分で問題解かないと身につかないよ。それに提出は三限目だし、まだ時間あるんだから少し頑張ってみるのはどうかな?」

「無理だよ尾崎。俺達にとって数学は鬼門なんだ。時間があっても問題は解けないんだよ」

穏やかに九条を諭そうとする尾崎の肩を、いつの間にか移動していた筒井が掴んでいた。

……あいつら、今度は尾崎を獲物にしようとしてやがる。




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