◆一輪の花?(エムペ版)
F
少し離れた場所から、空気を揺るがすような一際、大きなざわめきが聞こえてきた。
「なんだろう?」
箸を止め、ざわめきの中心へ視線を向ける。
その方向には、65型の大きなテレビが置かれており、その周りを大勢の生徒達が取り囲んでいた。
「……新種のウイルスが見つかったらしい」
斉藤先輩が呟くように口を開いた。
「ああ、あれか。ついに公式発表したのか」
『え?』
私と幸田君の視線が同時に美咲先輩を捕らえる。
「以前からネット上で騒がれていたんだが……そのウイルスに感染すると死亡率百パーセントなのだそうだ。既に死亡者が何十人か出ていると言われているが……状況から推測して実際はもっと多いだろうな。まあ、今は、日本では感染者は見つかっていないようだが……時間の問題だろう」
――新型ウイルス……五十嵐さん戻らなくていいのかな。
あれでも一応、製薬会社の跡取りで、研究員でもある。
五十嵐さんの製薬会社は、新薬開発にとても力を入れていて、莫大な資金が投与されていると聞いている。
おそらくこの新型ウイルスのワクチン生成も研究を進めていると思うのだけど……。
そういえば、龍兄が今回の件に五十嵐さんが関係しているって言ってたっけ。
まさかこのウイルス関連とか――いや、考え過ぎか。
新型ウイルスと、幸田君との繋がりがあるとは思えないし……
「じゃあ、もし、そのウイルスが日本にきたら、俺達も危ないってことですよね?」
幸田君が不安そうな表情で美咲先輩に聞く。
「そうなるな。早いところワクチンが出来るといいのだが……」
美咲先輩は微かに眉間に皺を寄せ、小さく溜息をついた。
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