◆一輪の花?(エムペ版) C 「これで、よし!」 澄み渡る空、柔らかな太陽の光が降り注ぐ寮の屋上で、幸田君は満足そうに目の前に干された布団シーツを見上げた。 そよ風が吹く度、干したばかりのシーツから洗剤のいい香りが鼻孔をくすぐる。 寮の屋上は、面積の半分が洗濯物を干せるスペースになっているのだが、寮生の大半は乾燥機を使用しているので、此処には申し訳ない程度にしか洗濯物が干されいない。 男ばかりだもんね。こんな風に朝から屋上に洗濯物を干す生徒は少数派なんだろうな。 「やっぱり、乾燥機で乾かすより、太陽で乾かす方がいいよなー」 「うん。お日様の匂いって気持ちがいいよね」 「だよな。更に、電気代かからずタダだし、エコにもなって、一石三鳥だ!」 その少数派の幸田君は、ぐっと拳を握り、なんだかとても楽しそうで、私も思わず頬が緩んでしまう。 「二人とも随分と楽しそうですねえ」 背後から抑えたような小さな笑い声が聞こえてきた。 声の主は、朝日を浴び、癖のある柔らかそうな髪が、稲穂のように輝いて見え、なんだか神々しく見える。 そういえば、生徒の中に彼の事を天使だと称している人が居たなあ。 「あ、香山先輩。おはようございます」 軽く頭を下げる幸田君に、香山先輩は天使の称号に相応しい微笑を見せた。 「はい。おはよう。尾崎君も、おはよう」 「おはようございます。香山先輩も洗濯物干しに来たんですか?」 「いえ、幸田君に相談がありましてねえ」 そういうと、香山先輩は手に持っていたワイシャツを私達の前に広げて見せた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |