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◆一輪の花?(エムペ版)
B



「あ、俺は三年の秋月 誠(アキツキ マコト)、一応、生徒会長やってるんだ。よかったら生徒会室に遊びにおいでよ。凛君なら大歓迎だからさ」

――生徒会長。

気崩した制服、赤く染められた髪、へらへらとした締りのない笑顔。

なんというか、私の中の会長というイメージとは、随分とかけ離れているのだけど……。

「また、そんな勝手なこと言って。美咲先輩に怒られても知りませんよ?」

言葉に棘を含ませた幸田君が、腕を組み秋月先輩を見やる。

美咲先輩って、誰だろう?

疑問に思っていると、龍兄が腰を屈め私の耳元で声を潜める。

「この学園の副会長の事だよ。二年の美咲 玲(ミサキ レイ)っていって、色んな意味で結構好き嫌いが激しいヤツでさ……あ、本人だ」

龍兄が何かに気付き顔を上げると同時に、秋月先輩の豪快な笑い声が聞こえてきた。

「それなら大丈夫だって! 玲も可愛い子、大っ好きだからなー!」

「会長と一緒にされると、非常に不愉快なんですがね?」

突如、冷えた空気が秋月先輩の背後から流れてきたような気がした。

「あはは、玲、居たんだねー」

おそるおそる振り返る秋月先輩の先には、肩につきそうな少し色素の薄いストレートの髪を後頭部で一つにまとめ、中性的な顔立ちの稀に見る見事な美形が立っていた。

秋月先輩より少し背が低く、細身だからだろうか、線が細い印象を受ける。

龍兄が“本人だ”と、口に出していたし、恐らく彼が美咲先輩なのだろう。

――しかし、なんだろう。

この人……笑顔なのに目が一つも笑ってない。

秋月先輩も顔が強張っているし――なんとなくだけど、彼等の力関係が解ったような気がする。

「おや、君は確か……尾崎君だったかな?」

「あ、はい。そうですが」

あれ?この人とは、初対面だよね?

なんで、私の名前を知ってるんだろう?

美咲先輩は首を傾げる私に数歩、歩み寄ると、先程のような冷淡な笑みとは違い柔らかく、それでいて華やかな笑顔を浮かべた。

目や鼻、唇、一つ一つのパーツが精巧に形づくられたように綺麗で、見惚れそうになる。

そんな極上の笑みを浮かべた唇を私の耳に近づけると、空気を含んだ囁き声で告げた。

「お互い理事長には苦労するね」

驚いて美咲先輩を見ると、美咲先輩は目線だけを動かし、龍兄を見やる。

――つまり、この人は理事長を、私の正体を知っているって事なのだろうか?

困惑しながら固まる私の姿を見て、美咲先輩は小さく笑う。

美咲先輩の少し冷たい、しなやかな指先が私の頬にそっと触れた。

「放課後、生徒会室においで。少し話をしよう。幸田君、尾崎君を生徒会室まで連れてきてくれるかい?」

呆然とした様子の幸田君は、慌てて首を縦に振り「判りました」と、返事した。





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