◆死灰屠り(完/連)
プロローグ
◆
リズムよく粘着質な音が響く。
ベージュのカーテンから、微かに日の光が滲み出る部屋の中央で、一人の少年が座り込んでいた。
少年の前には、一匹の黒い猫。
猫は、四日ぶりに出された“食事”を一心不乱に貪っていた。
「沢山お食べ。僕の恨みや怒りも全て……」
少年は、かすむ視界を必死に凝らし、猫を見つめる。
猫はフローリングの床に出来た赤い水溜りの中で黙々と“食事”を平らげていく。
そんな猫の姿に少年は、血の気の無い顔色をしながらも、愛おしそうに微笑んだ。
「いい子だね。沢山、沢山食べて、あいつらを……」
少年はそこまで言うと、糸が切れた操り人形のように床に倒れこむ。
水音を立てて倒れた衝撃で血の泉が、ゆるりと面積を増やした。
猫は、口の周りを舌で一舐めし“判っている”とでも言うかのように、傍らに転がる少年へ鳴き声を一つ上げる。
だが、少年からの返答は無い。
猫は気にした様子もなく、軽く目を細めると、再び、食事を再開させた。
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