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◆死灰屠り(完/連)
第二十話



身体の奥から、はい上がってくるような悪寒に耐えながら、辺りに視線を凝らす。

そこには、佐々木にも暗闇の中を更にどす黒い何かが四方から自分達に近付いて来るのが視認できた。

「佐々木さん、私から絶対に離れないで下さい」

「……あ、あぁ」

佐々木は固唾を飲みながら頷く。

春日は辺りに鋭く視線を向けたまま、蒼焔を手元に呼んだ。

蒼焔が春日の手に触れるのと同時に、蒼焔の青白い躯が溶けだすかのようにゆらめく。

すっかり犬の形をなくし、炎のような光だけへとなった蒼焔は、春日の右手に纏わり付くように再び形を変え、数秒も経たない内に、それは剥き身の刀がへと変化していた。

その刃は、従来の日本刀より長く、蒼焔と同じ色をした光りが燈されている。

佐々木が突然の出来事に唖然としている中、春日は刀を構えると、無造作に濃厚な闇へと滑らせた。

春日の動きに合わせ、刃の青白い光りが暗闇に舞う。

閃光が走った空間は、どす黒い闇が霧散していった。

「……凄いな」

佐々木は、率直に感想を述べる。

春日は苦笑を浮かべながら、更に空間に刀を走らせた。

だが――

「……やっぱりキリがない……か」

春日は、小さくため息混じりに呟く。

「キリがない?」

呆けたような佐々木に春日は頷いた。

「この瘴気、いくら消しても次から次へと、出てくるんです」

春日の言葉通り、暗色のモヤは依然、佐々木達の周りを囲んでいる。

「何か、手立てはないのか?」

「……残念ながら今の私には、こうやって瘴気を払う事ぐらいしか出来ないです」

「ちょっと待て、それってヤバイんじゃ」

春日は淡々と口を開きながらも、瘴気を払っていく。

「そうですね。ヤバイかもしれません」

「おいおい」

「どうにかしたいのは山々ですが、仕掛けて来るヤツの本体も見付からないし……内側からは、どうしようもできないみたいですし……」

突然、春日はハッとしたように佐々木の方へ振り向いた。

「ん? どうした?」

「……君は誰?」

「おい、何を言って……」

そこまで口を開いた時、佐々木は、春日が佐々木の背後に視線を向けているのに気付いた。

佐々木自身も後ろを振り向く。

そこには、一人の少年が俯き立っていた。

その少年に佐々木は見覚えがあった。

山岡と共にいた時に、現れた少年だ。

「……ボウズか?」

少年はコクリと頷いた。

身体が透けて見える。

……このボウズは、この世の者じゃないって事か。

佐々木は、春日に振り返り、山岡と会った時に現れた少年だと告げる。

春日は、軽く息を上げ、自分達に近付いてくる瘴気を払いながら口を開いた。

「……君、聡君?」

少年は、また一つ頷く。

「サトルって、まさかっ!?」

「どうやら、そのまさかのようですね。彼は福山の息子みたいです」

春日のセリフに佐々木は、目を見開いた。

「なっ、じゃあ、ここにボウズが居るって事は、今回の事件の元凶はボウズなのか!?」

「……恐らく、それは違います」

春日はキッパリと言い放ち、暗闇に向かって刀を真一文字に振るう。

「じゃぁ、なんで、ボウズがここにいるんだ?」

少し悲しそうな表情で、春日は少年に話しかけた。

「聡君は、此処に捕らえられているんだよね?」

少年は、小さく頷き、そして、か細い声で「お母さんを助けて」と、言うと、少年は溶けるように姿を消した。





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あきゅろす。
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