◆死灰屠り(完/連)
第三話
※
事の始まりはこうだった。
知人から譲り受けた、この館のオーナー、渡辺大介(わたなべ だいすけ)は、館を改装しペンション風ホテルにしようとリフォーム業者に仕事を依頼した。
そして、一週間前、リフォーム業者が館を視察しにきた時、その業者の社員が一人忽然と消えた。
その当時は、その社員は元々サボり癖が合ったため、勝手に家にでも帰ったのだろうと思い、放置していた。
だが、その社員の家族からの問い合わせがあり、家に帰っていない事が判明する。
すぐさま、渡辺とリフォーム業者の社員達は館や周辺を捜索したが、次はオーナーである渡辺自身が消えてしまった。
社員達は、急ぎ、警察に連絡を入れ、警官、更には地元の自警団達も捜索に加わり探し続けたが、その日の内に今度は警官一人が消えてしまった。
そして、次の日にもまた警官が一人消えた。
失踪にしてはあまりにも不可思議で、地元の警察では手が余ると判断し、本庁の方へ応援要請を入れ、次の日には、佐々木達がここに派遣されたのである。
現場に着いた佐々木達は、さっそく館や周囲を検分し始めたが、気味が悪い館だというだけで、特に不審な点は見つからなかった。
そこで失踪や行方不明ではなく、違う観点から調べようとした矢先、共に派遣された仲間の一人が姿を消してしまった。
急遽、本庁に連絡を入れると、佐々木の直属の上司に‘捜索及び、調査を取り止め’の命令がだされ今に到る。
「――で、あんたたちになら行方不明者の居場所が判るって言うのか?」
佐々木は苛立ちを込めた声色で春日達に問いかけた。
正直、この不可思議な出来事に佐々木は手も足もでない状態だ。
なぜなら、最後に消えた同僚の山岡は、消える直前まで館の一室で佐々木達と共に会話を交わしていたからだ。
ところが、その部屋を出た時にはもう、山岡の姿はなかった。
山岡が一人、佐々木達に気付かれないように部屋を出ることは状況的に不可能だ。
現に、一つしかなかった部屋の出口には、他ならぬ佐々木自身がいたのだ。
佐々木は仲間が部屋を捜査している姿を部屋のドアに背を預けた状態で見ていた。
一通り捜査が終了し廊下に出るため皆から視線を外した数秒……五秒もかからなかっただろう、その間に山岡は消えていたのだ。
元々、佐々木自身、神隠しや幽霊などオカルトの類は信じていない。
――だが、今回ばかりは、状況からみて、人外の力が働いているとしか考えられなかった。
そして、本当にそうなのだとしたら、佐々木にはどうする事もできない。
自分の仲間一人助ける事も出来ない、己の腑甲斐なさに腹が立っていた。
それと同時に、こんな子供に助けを乞わなければならないという事実が、情けなさを増大させるのだ。
春日は佐々木の物言いを気にすることも無く、ゆっくりと館に視線を移した。
「蓋を開けてみないと何とも言えません。とりあえず、今から中に入ってみます」
そう言うと、春日は小泉に視線を移す。
小泉は春日の視線に一つ頷くと二人は館の入り口へ向かった。
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