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SHORT
imitation 雪山の偽キョン




雪山症候群ネタ。
古泉視点。



■imitation



僕達五人は何者かによって
吹雪の雪山の館に閉じ込められた。

僕はお風呂上がりの
割り当てられた部屋で、
一人で考えていた。


何者の仕業だろうか。
長門さんまでわからない
と言っているし、
どうにもすることが出来ない。
僕は時場所場合限定の超能力者なのだ。

もっと詳しく今の状況を知りたいが、
長門さんはあまり喋ってくれないし、
朝比奈さんは全く危機を感じていない。
涼宮さんには気付かれるわけにはいかない。

キョンくんと話し合おうか…

でも、一般人の彼にはどうすることも出来ないし、
何より彼には負担をかけたくない。

こんなことになるとは
まさか思っていなかった。
僕達はこのまま、
この館で暮らすことになるのだろうか。
それで良いとしても、
涼宮さんがそれで退屈しないはずがない。

僕達は…どうなるのだろうか。


みんな各部屋に戻ったから、
もう寝ようとしているだろう。

こういう時は
寝るのが一番だが、
あいにく寝られそうにない。
キャラ作りなどではなく、
僕は本当に心配性なのかもしれない。


とりあえず、
部屋を暗くしてベッドにでも入っておこう。
そう思って電気のリモコンを手にとった瞬間、
ふと視線を感じた。

ハッと振り返ると、
ドアの側には…
キョン君が立っていた。

「え、キョン君…?
どうかしたんですか?」

全く音もしなかったし、
気配も感じなかった。
僕はそういうものには
敏感なたちなのだが…

「どうもしないけど、
ただ…突然、
お前に会いたくなって」

そう言って、
テクテクとベッドに近付いてくる。

キョン君がこんなことを言うなんて…
何かおかしい気がする。
情事の最中に甘い言葉を言ってくるのはともかく、
普段はツンツンしている彼が…

こんな状況で、
彼も不安なのだろうか。

「それは、嬉しいですが…
ちょっ!?キョン君!?」

あろうことかキョン君は、
僕の入っていたベッドに乗っかって、
僕に跨がってきた。

「どうしたんですかっ」

彼からこんなことをしてくるなんて…
おかしいだろう。

「古泉、…好きだ…」

僕の問い掛けを無視して、
唇を近付けてくる。

おかしい。絶対に変だ。
どうしたというのだ?

「待ってください」

近付いてくる唇を押さえる。

彼はなぜ止めるんだ、
という顔をしているが、
こんな彼とキスはできない。
何かがおかしい。

「あなた、変ですよ。
何かあったんですか」

「何もないって。
俺はお前のことが好きなんだ。
キスしたいのだって、
当たり前だろ」

そんな言葉をキョン君からもらえるなんて、
夢のようだ。
…そうだ、
こんなことあるはずがない。

「…離れてください。
あなたは、誰ですか?」

僕の腕を掴んでいた手を
冷たく振り払うと、
彼は傷ついたというような顔をした。

本物のキョン君に
そんな顔をさせるような人は、
例え自分でも許せない。
だけどこれは…
キョン君ではない。
全然違う、誰かだ。

「何でそんなこと言うんだ?
俺は俺だ」

まだシラを切るつもりか。

僕にわからないはずがない。
これはキョン君ではない。

僕のことが好きだ
なんて…
彼が言うわけがない。
いや、言ったとしても…

こんな平気な顔で、
あの彼がそんな台詞を言えるとは思えない。
ごくたまに、
真っ赤な顔で言ってくれる…
そんな彼の言葉が、
僕は欲しいのだ。

いくら見た目がキョン君でも、
彼じゃない人と
キスは出来ない。

「嘘はもういいです。
どいてください」

「そうかよ…」

力づくで押しのけようとすると
『キョン君のような誰か』はヒョイとベッドから飛び降りた。

「ちょっと待って下さい!」

部屋のドアに向かって駆けて行く彼のあとを追って、
ドアを開けると…


ドアに手をかけた、
SOS団の面々の姿があった。



――――

原作の雪山症候群での古泉と
長門の作ったキョン。
imitation…偽者・模倣







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あきゅろす。
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