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SHORT
裏工作 腐女子な有希と

 
 
部室にて。
有希キャラ崩壊(腐女子)です。
キョン視点。
 
 
 
■裏工作
 
 
 
「そろそろ不思議なものが現れても良い頃だと思わない?
だ・か・ら!!
明日はいつもの駅前に集合!!
遅刻は罰金だからね!!」
 
ハルヒはいつも通り、
どんな反論も受け付けない、
と言うように勝手に俺達の休日の予定を決定して、
 
朝比奈さんを引きずって
サッサと部室を去っていった。
 
「な…なんだあいつっ。
また現れもしない異世界人探しかよ…」
 
ハルヒの提案に俺がげんなりするのは
いつもの話だが、
 
今回はタイミングが悪すぎた。
 
「おい、古泉…
明日、さ、どうすんだ」
 
「えぇ…
急な予定変更が入ってしまいましたね」
 
明日土曜日は、
久し振りに二人で
いわゆるデートというものに出掛けるつもりだったのだ。
 
久し振りということで、
正直俺も…
少しは楽しみにしてたりとかしたのだが。
 
「仕方ありませんね。
二人同時に休んだりしては、
涼宮さんの機嫌を損ねかねますし…」
 
ああそうだろうよ。
 
お前はどうせ俺より、
神とやらのご機嫌とりを優先するんだろうよ。
 
もちろんそれが当たり前だ。
俺のこの日常は、
古泉が神人を退治したり、
古泉がハルヒのために走り回ったり…
こいつによって支えられている部分もあるのだ。
 
それはわかってるさ。
わかってるけど、
 
…でもよ…
 
ちょっとくらい、
ムッとしちまうのは、
別に俺の心が狭いとか、
そういうわけではないと思う。
 
ハルヒに妬いてるわけじゃないけどよ。
 
「そうだな、
明日は中止ってことで」
 
心でどう思っていようと、古泉に当たるわけにもいかない。
明日行けなくなったのは、
古泉が悪いわけじゃない。
 
「いえ、中止はもったいないと
思いませんか?」
 
俺がすっぱり諦めようとしているのに、
古泉は意味ありげに微笑みを投げかけてくる。
 
「…もったいないけど、
仕方ねーだろ−が」
 
「ここは一つ、裏工作をする…
というのはどうでしょう」
 
「裏、工作…?」
 
こいつの口からそんな言葉が出ると、
なんか怖いんだが…
 
古泉のやつ、
何をする気なんだ?
 
俺の心配をよそに、
古泉が向かったのは
帰る準備をしている長門のもとだった。
 
「長門さん、頼みがあるんですが」
 
「…なに」
 
漆黒の瞳で見上げる長門に身長を合わせるように、
古泉が腰を屈める。
 
「明日の不思議探しですが、
組分けの時、
僕と彼を二人で…
同じにしてもらうことは出来ますか」
 
なるほどな…
裏工作ってのは、こういうことか。
うん、これぞまさに
困った時の長門頼み。
 
古泉も『出来ますか』なんて聞いているが、
長門に出来んことなどない。
 
「長門、俺からも頼む」
 
こんなことを頼めるのは、
長門くらいしかいないし、
こんなことを出来るのも、
長門しかいない。
 
俺と古泉の関係については
誰にも言っていないし
もちろんバレるわけにもいかないが、
長門になら
何も言わなくとも既に伝わっているだろう。
 
だからこそ古泉も、
こんなお願いをしているのだろうよ。
 
「…可能」
 
長門は視線を俺と古泉の間で三往復くらいさせ、
ついでにチラリと団長席に目をやってから、
ポツリと、だがハッキリと言った。
 
「ありがとうございます」
 
すかさず古泉が頭を下げ、
思わず俺もそれに習う。
 
「ただ、条件がある」
 
「じょ、条件?」
 
何かしないと、
長門にもそんな情報操作は出来ないってことか?
いや、長門にそんな簡単なこと、出来ないはずがない。
 
これはあれか…
俺と古泉の頼みを聞く変わりに
俺達も長門の言うことを聞けと、そういうことか?
 
「なんだ、条件って。
俺に出来ることなら、俺がやるが」
 
「あなただけでは出来ない。
これには古泉一樹も必要」
 
「僕も、ですか」
 
なんだ?
俺と古泉で…何をすれば?
 
 
「キスして」
 
長門が唐突に、こう言った。
 
俺も古泉も、
一瞬何を言われたかさっぱり理解出来なかった。
 
おい古泉、そんな間抜け面、
お前のイケメンフェイスが台なしだぞ…
って、今俺も、
相当惚けた顔をしているんだろうが。
 
「…あー、長門?」
 
長い沈黙を破ったのは、
俺の変に掠れた声だった。
 
「あの、悪いがな…
気付いてないかもしれんが、
一応その、なんだ…
古泉は、俺とな?
付き合ってるんだ。
お前が古泉のことを好きだったのなら、
それは本当…申し訳ない」
 
いくら長門相手でも、
恋人を自分以外とキスさせるのは嫌だ。
誰だってそうだろ。
 
それにしても、
長門が古泉を好きだったとは…
 
「違う。
私は古泉一樹に対して、
恋愛感情というものは抱いていない。
私が条件として提示したのは、
あなたと、古泉一樹が、
キスをすること」
 
「…っだ!?」
 
「な、長門さん…」
 
つまりそれってどういうことなんだ?
 
俺と、古泉が?
キスをするって?
で、なんでそんなもんを長門は見たいんだ?
 
俺はクエスチョンマークだらけで古泉を見たが、
古泉は何か理解しました、
みたいな顔で肩をすくめた。
さっきの間抜け面はどこへやら
すっかりいつも通りの
爽やかハンサム一樹君だ。
 
おい、古泉。
俺にも説明しろ。
 
「わからないのなら、
後で説明してさしあげます。
今は長門さんの条件を聞くのが先でしょう、
では、」
 
古泉は何ともないような感じで
俺の肩に手を乗せてきた。
 
そしてスッと引き寄せられ…
 
「ちょ、ちょっと待て!!
いいいい意味がわからん!!
なんで俺がお前とっ
こ、こんな人前で…!!」
 
正確に言えば、
長門は人じゃあないが…
この際これは関係ない。
 
「そう言われましても。
長門さんからの条件ですから。
明日ペアにしてもらうための、ね?」
 
長門に顔をやると、
漆黒の瞳から真っ直ぐに向けられる視線に
まるで催促されているような気分になってしまう。
 
「明日僕といたいですよね?」
 
それを言われると、
何も言い返せない。
その通りだからだ。
 
「…っ…変なことするなよ…」
 
「しませんよ、キスだけです」
 
ゆっくり近付いてくる古泉に
俺もゆっくりと目を閉じた。
 
古泉の少し冷たい唇が触れ、
 
目を閉じているはずなのに、
横顔に長門の視線をビンビン感じた。
 
時間にすれば、
三秒ほどだっただろう。
 
何もしないと言った通り、
本当に、触れるだけのキスだった。
 
唇が離れていくのを感じ、俺もそっと目を開けると、
同時に長門が音もなく立ち上がった。
 
「了解した」
 
それだけ言い残して、
長門は部室から出て行った。
 
その無表情が、
なぜか少しばかり嬉しそうに見えたような気がした。
 
「お顔が赤いですよ」
 
まだ俺の腰に手を回したままの古泉が、
そっと頬に触れてくる。
 
「う…うるせー…
おら、明日遅刻したら罰金なんだろ、
早く帰って寝るぞ!!」
 
「寝るというのは、
僕と一緒にですか?」
 
 
この案を拳で一蹴して、
別々の家路についたのは言うまでもない。
 
 
 
翌日。
 
俺と古泉は何の心配もなくてきとうに選び、
印入りの爪楊枝を引き当てた。
 
長門は、アイコンタクトを取り合う俺達には目もくれず、
ひたすらティーカップと見つめ合っていた。
 
長門様様だな。
 
 
「なぁ、古泉」
 
二人で出掛けるなんて言っても
別に詳しい予定があるわけではない。
ブラブラとショッピングモールを歩きながら、
ふと思い出したことを
古泉に尋ねた。
 
「昨日のその…長門の言ってた条件さ、
なんであんなことだったんだろうな?」
 
「おや、まだわかっておられなかったのですか。
もうあなたも気付いているかと思っていました」
 
悪かったな。
 
「長門さんはおそらく…
最近言われる、
腐女子という方なのではないでしょうか」
 
「婦女子?」
 
いや、長門はまず人間じゃないんだぞ。
 
「その顔は多分、
わかっていらっしゃらないようですね。
まぁ、いいじゃないですか」
 
「なんだよ、教えろよ」
 
気になるとこで切りやがって。
 
ムッと睨みつけてやると、古泉は黒いスマイルを浮かべた。
 
「教えてさしあげましょう。
ただ、条件があります。
あなたからキスして、」
 
「教えていらん!!」
 
 
 
――――
 
キスだけで
引っ張りすぎました… 苦笑
腐女子な有希も可愛いです
 
 



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