Uターン アッシュとぼく 「やあ」 「やあ」 「来てたんだ」 「ちょっとね。観察さ」 「レイン?」 「そう。ケチャップはぼくより劣っていたはずなんだけどな。あいつも頑張ってるよ。この生き物はとても面白い」 「レインは寝てるから、起こさないようにね」 「ああ。あまり怒らせたくない。以前ちょっかいを出したら襲われてね」 「レインが怒るなんて、珍しい」 「寝ぼけてたのだと思う。焦点が定まってなくて当たらなかったし、一度きりだった」 「威嚇だったのかもね」 「詳しくは分からないね。そこそこ頭はいいらしいから」 「……ケチャップって昔はおちこぼれだったの?」 「ボニータとケチャップとぼくの中では一番下だった。その他の雑魚魔女よりずっと強かったがね」 「意外だなあ」 「でもじきに抜かれる。ボニータは悪魔に魂を売ったからね、あれは論外だ。負けず嫌いなんだ、あいつは。だからずっと城にこもってるんだろう」 「だろうね、あんなに美人なのにひきこもってばかりだなんて、勿体ない」 「ぼくのほうがかわいくないかい」 「流石に、男に欲情するほど飢えてないよ」 「ケチャップにロゼとアイ、ボニータ、マチか。こんなに若い女が居るんだもんな、大丈夫なの?」 「マチはロボットだ」 「そうでした。で、どうなの?」 「どうって……べつに、何も」 「つまんないね。ダニーは外でやってるだろうけど、おまえはやってないだろ」 「別に義務じゃないだろ」 「そうだけど。ちょうどやりたいほうだいしたい時なのにさ、働いて家に帰ったら家事の手伝い、それで飯食って寝るだけなんて。悲しいなあ」 「遊べるなら遊びたいけどね。とにかくお金がない……金金って言いたくないけど、必要だから。喉から手が出るほど、欲しい」 「お前はなあ……、生まれてきた種族が悪かったな。ゾンビなんて力だけしかない。もう少し頭が回ればいい仕事につけるんだが」 「バカで悪かったね」 「どんな仕事してる?」 「あー、いつもは家建てたりとかだけど、たまに用心棒とか、闘技場行ったり」 「そのへんがいい所だろうなあ。男娼にでもなりゃあ楽に稼げるけどな」 「ん、最近見なかったけどまた流行ってるのか」 「山のほうからずいぶんと綺麗なエルフが何人かやってきたらしい。そいつらがやってるんだと。それが原因らしい」 「へえ。稼げるの?」 「2500は軽いかな」 「うわっ、大金じゃあないか」 「今ならそれより稼げるぜ。いつでもこういう仕事は稼げるがね、ブームだから」 「人間じゃあこうはいかないだろうなぁ」 「種族的にみんな性欲が人間よりあるからな。でもありゃあ最後の手段だよ。つい二日前にスラムで綺麗なエルフを一人見かけたんだがね、とてもかわいそうだった」 「どんな感じだったの?」 「髪はめちゃくちゃに伸びて、目は錆びた金属のようだった。羽はもがれていて、腕も片方がなかった」 「うそだろう」 「事実さ。田舎ものだから、わからなかっただけ」 「……死にたくなった時に……、金をケチャップ達にたくさん残すためにやるよ」 「ああ。そうしな」 ←→ [戻る] |