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Uターン
グレイとケチャップ

「お、っと!」
「邪魔してる」
「いらっしゃい、グレイちゃん。ひとり?」
「……その、グレイちゃんつーの、今日はやめてくれ」
「わかった。機嫌悪いね、アッシュと喧嘩でもした?」
「……」
「図星?」
「そんなとこだ。なんか、ごめん。向こうに居られなくて」
「いいの。うちは来る者拒まずよ。落ち着くまで居るといいわ」
「ありがとう、甘えさせてもらう」
「……泣いてたの、目が赤いわ」
「元からだ」
「ううん。いつもより赤いもの」
「……そうか」
「我慢しちゃだめよ」
「してない」
「我慢したらでるものよ、涙って」
「……そうか」
「うっとうしいかしら、私」
「いや、気が楽」
「そ、よかった。どうして喧嘩したの、いつも嫉妬しちゃうくらい仲いいのに……」
「よくわからん。お前のほうが付き合いは長いだろうか」
「軽く二百年は一緒だったわ」
「そりゃ、大先輩だ」
「うん、ま、そーなるわね」
「……アッシュ、あいつ、男がいいんだろうか女がいいんだろうかって……」
「男じゃないの、あの子は」
「なんか、最近男みたいな格好しだしてさ」
「ま、男だものね」
「オレに女らしさを求めてるんだろうかって……」
「グレイは、女がいやなの?」
「好き、好きだけど……、自分が女っつーのはどうも、しっくりこない」
「アッシュは……、どうなのかしらね」
「どっちでもいいんだろうか。女のように振る舞ってたのは趣味、みたいな……」
「グレイみたいに、自分が男だって思えない、ってわけじゃないと」
「そう。ずっと同じように思ってるんだって勝手に決めつけてた」
「あの子は出会ったころから不思議な子だったわ」
「どんな?」
「なんか……、悟ったようにして、なんでもわかってるんだって目をしてた、悲しい目だった」
「オレ、アッシュの過去って修行してたって事しか知らないんだ」
「まあ、魔人だから……。ろくな人生じゃなかったでしょうね」
「オレは楽してきたからなあ……、死ぬ時はそりゃあ、苦しかったものだけど、修行無しで悪魔になったから」
「素質があったのね」
「そうなるんだろうか」
「アッシュはね、才能もあったし、よく努力したから。師匠もアッシュに抜かれるって心配してたくらい。だからひとりで悪魔になれたのね。私なんてさ、まだ魔女でしょう」
「おまえは悪魔にはならないんだろうが」
「まあね。私、ずっとずっと誰かに殺されるか自分を殺すかしないと死ねないなんて、耐えられないもの」
「それに、人間や魔女のころのように簡単じゃない」
「だって、子どものほうが先に死んでしまうって、耐えられる?」
「子ども」
「レインよ。レインが死んだら……、私も死ぬの」
「マイケルやマチはどうするんだ。あいつらは生き続ける。お前を慕ってついてきてくれてるのに」
「マチはダニー、マイケルはロゼがいるから、大丈夫よ」
「そういう問題じゃないだろうが」
「……なによ」
「マイケルはお前の勝手で城に縛り付けているようなものだろ、マチだって、お前が拾ってこなけりゃスクラップになるはずだった」
「なにが言いたいわけ」
「お前の子はレインだけじゃあない。死ぬなら後片付けをしてからにしろっつってんだよ」
「私の勝手でマイケルを殺してマチを壊せっていうの?」
「嫌なら生きろよ」
「……ごめん。私……」
「いや」
「励まさなきゃいけないのは私なのに」
「勝手な話だけどさ、すっきりしたよ。少しだけ」
「……そう」



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