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Uターン
マチとケチャップ
「!?」
「あら、何もない場所でこけちゃって」
「少し……視界が……。おかしいですね……」
「チェックしてみて」
「了解です」
「うーん、そろそろパーツの寿命かしら」
「眼球付近に異物反応が出ました」
「異物……?」
「はい、間違いなく」
「何かしら。早く治したほうがいいし、すぐ開けましょう」
「ではシステム終了します」

「オッケー。ベッドに寝てちょうだい」
「はい」
「パーツの寿命じゃなくてよかった。出来ない事はないけど、苦手なのよね」
「そうなんですか……。あ!」
「……?」
「何かとれましたか?」
「うーん……」
「これは?」
「レインの皮膚だわ、これ」
「皮膚!?これが!?」
「ええ。掃除の時に入ったんじゃあないかしら」
「これが入り込んだとはとても……」
「これってね、液体状のものを取り込んで膨らむのよ。あの子の意思で取り込まない事もできるんだけど、離れてしまうとどんどん取り込むの。たぶん、偶然入ってきた雨だとか涙がたまって膨らみ邪魔をしていたんでしょうね」
「はぁ……」
「うん、起動して大丈夫。問題ないと思うけど一応チェックしてね」
「……。はい、問題ありません」
「よかったよかった。体に何か異常があったらすぐ言ってね」
「了解しました!では仕事に戻ります」
「ス!ト!ッ!プ!」
「?」
「一休み。お茶でもどーお」
「でも私、飲み食いはできませんよ」
「お茶ってね、お茶って言うけどメインはお茶じゃないのよ。そこ。かけて、かけて」
「は、はぁ……」
「こんなの久しぶり。昔はよくおしゃべりしたわよね」
「そうですね。最近人が多くなってきましたから、やる事が増えて。洗濯も料理も人数分。掃除も大変で」
「4人の頃が一番安定してたかもしれないわ」
「ケチャップさん、レインくん、マイケルさん、私ですか」
「そう。マイケルが働いて、マチが家事をして、私は研究してたまに薬を売って、レインは体を動かす練習していたっけ」
「4人の頃に戻りたいのですか?」
「そんなわけじゃないの。にぎやかなのも、どっちも楽しい。でも、少し離れてしまった気がして悲しいの。マチはダニー、マイケルはロゼ、レインにはアイが居るでしょう。私、ひとり、取り残されてる」
「……ダニーは一方的に……」
「いいの、気使わなくて。普通よ。私より気が合う相手が居るなんて事。でもあなたたち三人、全員私が作ったから、自分の作ったものなのにうまくいかなくて少しイライラしてるだけなの。あなたたちに意思があるから、仕方ないわ。分かってる。分かってるけど……」
「マイケルさんも……?」
「作った、とは言えないかも知れないわね。でも、あの人のあの姿を作ったのは間違いなく私よ」
「??」
「もともと、人間だったの。死んだら私の城に居たんですって。テディのしわざだった。帰る事はできないから、こっちの世界に合う体にしてあげたのよ。ただの人間なんて、この世界じゃあ食われるか実験体にされるかおもちゃにされるかだもの」
「人間はとても弱い……。あれが何故別世界で栄えているのか、不思議なほどです」
「あちらには私達のような生き物が居ないからね」
「行った事があるのですか?」
「ううん。でもテディが教えてくれたし、マイケルはこちらの世界の生き物に驚いていたから」
「テディさんはすごいんですね。別の世界に行けるなんて」
「悪魔でも最高クラスの悪魔よ。たった一人で別世界を滅ぼした事があるんですって」
「まぁ」
「悪魔になればきっと色んな事が出来るけど、私は絶対に嫌ね。悪魔は死なないけど……、時間制限があるからこそ必死に頑張れると思うの」
「何が正しいのか、何が正しくないのか私にはわかりません。でもずっと私は応援しています」
「ありがと。じゃあそろそろ続きやろうかなぁ」
「私も仕事に戻ります」
「またゆっくり……、話したいわね」
「ええ!」



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あきゅろす。
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