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Uターン
ダニーとぼく
「お疲れ様」
「よお、そっちはどうだったんだ?」
「今日は調子が良くてね。負け無しさ」
「やるな、この!」
「だから今日は期待できるよ」
「んじゃ帰りに一杯やろうぜ」
「えー。ケチャップに怒られるよ」
「俺もなかなかでさ」
「へえ」
「殴り合いは弱いが銃の扱いは達人級さ」
「自分で言うなよ」
「だから、ちょっとさ。ちょっとだけ」
「本当にちょっと?おれ、酔っ払ったダニーを背負って帰るなんて嫌だぜ」
「約束するよ」
「ならまぁ……いいけど」
「やった!ほら、早く金貰って行こうぜ。可愛い子が居る店知ってんだ。ケツがエロくってさあ!」
「え?そういう所行くの!?」
「酒は一杯で我慢するから。お前も溜まってんだろ」
「いや……飲みは付き合うけど。一緒に行くの?」
「行こうぜー。一人じゃ行けないだろ。一回やってみろよ」
「いや……。ダニーが恥ずかしいんじゃないの」
「ちげーよ!ヒーローのダニー様が一人であんなとこに居るなんてカッコつかねーだろ」
「二人でも一緒だと思うけどな。彼女作れば?」
「彼女なんてぱっと作れるもんじゃないだろ……」
「まあね。付き合った人数は?」
「お前は?」
「こっちが聞いてるんだけどなあ」
「お前ゼロだろ。そんな感じ」
「イチ」
「……その女は今何してる」
「死んじゃったんだ」
「……そうか」
「いいんだ。気にしないで。もう随分昔の話でさ。別れようって言われた訳じゃないから、……嫌な言い方だけど自分は自由で、自由に恋愛していいんだろうって思うし、他の人もそう思うって言うだろうけど。忘れられなくって、おれにはアイツしか、ないんだって、今好きな人居るけど一歩踏み出せないでいる、浮気って訳じゃないのに、罪悪感……。おれだけ幸せになっていいのかなって、女々しい考え」
「俺と逆」
「そうなの?」
「俺は、異性の人を本当の意味で愛した事がないのかも、しれない。それ以外の事ばかり目に入っていたから、なんとなくで付き合って、やる事やって、別れていた……、作業のようだった、やる事に行き着くまでが。沢山の女を傷つけてしまったなァって、よく思うよ。そんな奴が初めて本当に好きになった女がロボットなんて、さ。嫌味にも程がある。彼女らは俺を本気で好きだったんだぜ」
「モテるってのも大変だねえ」
「そうだなあ。断る勇気がなかったのかもしれない、もしくは、次は本気でこの女を愛せるかもしれないって、少し心の深い深い所で希望を持っていたのかも知れない」
「動物の本能のままに生きていたのかもね。きっと全部だろう。おれはそう思う」
「それもあるだろうな」
「いけない事だったって分かったんだろう?」
「ああ」
「じゃあ、これからなおせばいい。ヒトか機械かなんて、どうでもいい事さ」
「自信がない」
「やってみなきゃ、分からないって、いつも自分で言ってるのに?」
「傷つけないか不安なんだ」
「そのくらいで壊れるような恋、長く続かないよ」
「……そう……だな」
「どう、気分は」
「まあまあかな」
「初めてかも、ダニーとこんなに真剣に話したの」
「少し恥ずかしいな」
「じゃあ」
「?」
「なかった事にしよう。覚えておくけど、口にはしない」
「それってなかった事になってる?」
「でも忘れたくない話だ」
「そうだな」
「応援してる」
「俺もさ」
「じゃあ、行こうか。飲まないつもりだったけど、少しだけ飲みたい気分」
「そりゃあいいや!」





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あきゅろす。
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