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Uターン
マチとぼく
「マチ、おつかれさま」
「ありがとうございます。でも、褒められるような事はしていませんよ。いつも通りです」
「それが、すごいと思うんだけど?」
「プログラムですからね。私の意思ではありません」
「へえ、知らなかった」
「今、こうしてあなたと話をしたり、料理の献立を決めるのは百%私の意思ですが、仕事の実行はプログラムが中心となって動いています」
「つまり、やりたくない事を機械にやらされてるの?」
「いいえ。実行はプログラムがやっていますが、皆さんの手助けをしたいと思っています」
「よかった。嫌だったら、どうしたらいいのかって少し考えたよ」
「嫌だと言ったらどうするつもりだったんですか?」
「ううん……。もっと手伝いするよって言ったかな」
「では、少し手伝ってもらえますか。仕事と休憩ばかりで、やりたい事があまりできないんです」
「いいよ。できる事はやるから。おれも用事があるから、絶対にできるとは言えないけど」
「わかっています。たまにで結構ですから」
「……ところでさ、マチがやりたい事って何?」
「ああ、本を読んでるんです。文字はプログラムのおかげで前から読めるのですが、きちんとした意味が分からなかったんです。ケチャップさんに修理をしてもらってから、少しずつ分かるようになって」
「ケチャップ、すごいなあ、ほんと」
「はい。意思の無い機械だった私をこんなに楽しい会話ができるまでにしてくれたんですよ」
「魔法が使えるって、すごいな。おれも使えるようになったら便利だなと思って、たまにケチャップの本を見るんだが、何が書いてあるかさっぱりで」
「あ、私も魔法を使うのが夢なんです。だから本をたくさん読んで勉強を、と思いまして」
「マチならできるよ。おれと違って頑張りやさんだから」
「できるでしょうか」
「自分ができるって信じなきゃ、何にもできないよ」
「……そうですね。頑張ってみます」
「それにうちには沢山先生が来るじゃないか。こんなにいい環境はないよ。いつかケチャップやアシュレイよりすごい魔法使いになったりして」
「それは少し難しい気がします」
「どうかなあ。じゃあ、おれはそろそろ出かけるよ」
「どこに行くんですか?」
「ダニーとね、広場に。金になるいい話があるんだって」
「どんな?」
「詳しくはまだ聞いてないんだ」
「危ない事はやめてくださいね」
「死ぬような事はないと思うよ」
「……そうですか」
「じゃあ行ってくるよ」
「いってらっしゃい」
「……」


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あきゅろす。
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