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Uターン
ロゼとぼく
「今日はずいぶん冷えるね」
「そうね」
「もうみんな寝たみたいだ」
「そうね」
「何かあった?」
「何が?」
「いや、だって、さっきからぼーっとしてるからさ」
「そんなに?」
「うん。おれ、向こう行ったほうがいいかな。一人になりたい時だってあるだろ?」
「ううん、行かないでいい」
「そっか」
「うん……」
「……」
「ちょっとね、考え事してただけ」
「どんな?」
「いや、ただ、すごく幸せだなあって。あたし、長い間一人だったから、沢山友達が出来て嬉しい。でも、いつかなくなっちゃうんじゃないかって、怖くなる」
「まさか。みんなきみが大好きだって、知ってるだろ。そんな事ある訳ないよ」
「そうね。……随分昔の話なんだけど」
「うん……」
「ヒトの友達が居たの。すっごく仲良くなって、いっぱい遊んだ。ちょうどその時、病気が流行ってね、動物が沢山死んだ」
「うん」
「ヒトには移らない病気だったから、誰も死ななかった。でも、感染した肉を食べるとあまり重症にはならないけど、病気になっちゃうの。あたしは肉を食べないと栄養がとれないから、肉を食べたいけど、周りには病気で死んだ動物と病気にならない生きたヒトしかいなかったわ」
「……」
「生きる為に、ヒトを喰った。ヒトに手を出すとやっかいな事に巻き込まれるから嫌だったんだけど、仕方ないでしょう。食べなきゃ生きられないんだもの」
「そうだね……」
「こっそりと腹を満たして出て行くつもりだった。でもね、知ってる?ヒトってとってもおいしいの。止めたくても止められなかった。あの子に、ヒトを喰ってる所を見られた。あの子が騒いで大人達を連れてきたわ。戦いの訓練を受けてない村人なんて、何人集まっても怖くない。まるで、木みたいだった。ちょっと噛みついただけで倒れていったもの」
「大丈夫」
「?」
「おれたちは弱くないだろう」
「自信たっぷりね」
「オオカミの小娘なんて片手で止められるさ。だから、心配しなくていい」
「うん……」
「過ぎた事は、仕方ない。どうする事もできないから」
「……今日は寒いけど」
「?」
「雲がなくてよく星が見えるわ」
「そうだね。こんなに綺麗に星が見える夜は久しぶりだ」
「これならきっと死んだ人に届く」
「……ああ」
「……………」
「……………」
「……………」
「……………」
「……戻ろうか。アイが起きてぐずってるかもしれない」
「何か聞こえたの?」
「レインの声が聞こえたから」
「そっか。また喧嘩してるのかもな」
「そうね……」


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あきゅろす。
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