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Uターン
ケロイド、それから散らす処女

「私ね、見た目よりずうっと老けてるのよ。両親はそうでもないんだけど。きっとおじいちゃんの血だと思うわ……」

アンナさんのおじいさんは異能者、魔人だったそうだ。母さんがNDとして活躍していたころにアンナさんのおじいさんもNDに勤め、しかし過剰なストレスや過酷な現場に気を病み、若い奥さんと子どもを残して死んだという。
それの後を追うようにアンナさんのおじいさんの弟……、見せられた日記の持ち主『イヴァン・アルクィン』は母さんや親父と出会い、悪魔へと変わった。それから数日後に天使の襲撃を受け、親父を庇って死んだようだ。この人がいなければ俺は生まれていなかっただろうし、きっとアイヴィーも。
アンナさんのおじいさんには魔力に耐える身体があり、生まれつきの異能者だった……、らしい。まれに居るらしいのだ、産まれた瞬間から悪魔に魅入られ、物心ついた頃に大きな病で倒れる子どもが。この病っていうのは悪魔との契約だ。
きっとおじいさんの弟も耐性が高かったのだろうと思うし、聞くところによるとアンナさんはまだ若々しい20代の姿をしていながら免許証の生年月日はおよそ50年ほど前だった。無意識に体は魔法を使い、老いをカバーしているのだ。

「どうして魔女になりたいんですか」
「どうしてって、それが私のあるべき姿だと思ったからよ」
あるべき姿ってなに? ……なにがどうでも、俺はアンナさんを魔女にするわけにはいかない。俺にはこれからもこの世界での生活がある、家族がある。失敗すればアンナさんは死ぬ、よくても植物人間になってしまう。そうなると犯人は俺ってことになるからだ。
「……ごめんなさい。お願いされても、僕は若いので……、そういうことのやり方知らなくて」
「そう。私が知ってるわ、といっても、古い本の知識だけどね。こっちへきて」
う、ごまかせると思ったのに。アンナさんは立ち上がり、大きなベッドに腰をかけた。手をこまねくアンナさん、やりかたは知っていた。
「だめです」
「おばさんとじゃ、いや?」
「そうじゃなくって……、僕にはアイヴィーがいるので……、そんなことはできないです」
思わずはっとした。馬鹿野郎、自分からそんなこと言って!
「アイヴィー? 彼女? いないんじゃ?」
「あ、あ、あの、あ、え、あ……」
「妹さんね」
「……はい……」
ああっ、頭がクラクラする。俺にとってアイヴィーは妹だけど恋人でもあるのだ。それは事実だし撤回するつもりもないけど、公言すべきじゃない。
「すみません」
「昨日と同じことなら、平気?」
「え?」
「妹さんとしてたでしょ」
ああ、わかった。アンナさんはアイヴィーに嫉妬してる? アイヴィーと同じことをしたがってる?
「できないですよ、あれは特別な体質で」
「わかんないわよ」
……何がどうあれ、俺は弱みを握られているので断れない。気の済むまでアンナさんの言いなりになっているしかない。こればっかりは魔法でも、どうにもならない。
「……昨日のこと、今日話したこと、ぜんぶ忘れたふりをしてくれますか?」
「ふりでいいの?」
「そんな簡単に忘れたりできないですよね」
「それもそうね」
あーっ、もう恥ずかしいっ消えてなくなりたい。顔が真っ赤になって火照ってるのがわかる。
「準備しておいて、私、とってくるものあるから」
返事を待たずにアンナさんは部屋を出て行ってしまった。……はあっ。大きなベッドに飛び込んだ。少し甘い香りがしてくる。とりあえずベルトをゆるめるまではしたけど、それからは気が進まなくてぼんやりと汚れのひとつもない大きな窓を見つめていた。
カチカチと壁時計の秒針だけしか音はない。どうにかなりそうなくらい静まり返っていて、まるで世界に自分しかいないのではというあり得ない妄想に取り憑かれ、孤独感に四肢を震わせていることしかできない。

「ブロウズくん?」
声をかけられてはっと我にかえる。シャツをまくられると、傷と痣、火傷のケロイド、縫いあと。自分でも直視できない身体を、家族以外に晒すのははじめてで恐ろしかった。
「……僕の身体、醜いでしょう。外見じゃなく中も酷いんです。たくさんの虫が腹の中を這い回っているらしいですよ。触ったら病気になるかもしれないですね」
どうにか、避けられないかと思った。ピンクや黒に変色し、腫れ上がっている場所もある。ざらざらとしてかさぶたまみれで、本当に醜い。それしか言葉がでなくなるほど。アンナさんは黙っている。
「ごめんなさい、服着ます」
「……待って、いいの。関係ないわ、素敵よ」
「うそです」
「びっくりしたけどね。なんだか……、そうね、退廃的で」
「無理やり褒めなくていいですから」
シャツをつかむと、止められる。
「どうしてこんなになったの?」
ほらねやっぱり、素敵なんて思ってない。そりゃそうだ、この体は趣味の悪い落書きみたいだった。わざと汚い色ばかり混ぜているような。
「アンナさん、あなたの踏み入れようとしてる世界はこんな世界ですよ。もちろん楽しいこともあるけれど、僕はこの体であるということでたくさん嫌な思いをしました。結構、僕は再生力高いほうなんですけどね、それを越えるほどの傷をこれだけ受けたし、何度死にかけたのか死を覚悟したかわかりません。人間として育てられた異能者ってのはみんなそうです。皆人間よりも苦しみ、悩んでいますよ」
爛れた背中をくすぐられると、なんだかかゆい。
「いいことばかりじゃ、ないんです。いじめられることもあるし、僕は友達ができなかった。友達同士って軽くじゃれあったりなんて、するでしょ。力の加減が難しくて。運動できても大会に出られはしないし、他の迷惑にならないようならないよう、注意してなくちゃいけないから、思い切り遊べる相手は親父だけでした」
「妹さんは?」
「生き別れってやつで……、三年前に再会したんです」
なんだろう、ためこんだ言葉がどんどん出てくる。ベルベットさんにしかこんなこと相談しなかった。なぜって、ベルベットさんは何も言わなくても全部わかってくれて、黙ってても優しく慰めて、欲しい言葉をかけてくれる。もちろん少し人と話をしたくらいで解決に結びつくような簡単な悩みしまゃないから、ベルベットさんはひとつだって解決しなかったけど、それはベルベットさんじゃなく俺がやることだもの。
アンナさんはどこか雰囲気がベルベットさんと似てたからかな。
「僕はこうして……、アンナさんにもう一度考えてもらうことしかできません。たくさん秘密がバレちゃいましたから。広まったら僕はここで暮らせないです。アンナさんの言いなりになるしか、ないので……。よく考えて、本当に自分にとってどちらがいいのか、考えてください」
その時間、三秒。強く押され、ふわふわのベッドに倒れる。
「は、はやくないですか」
「よく考えたわ、今まで、なんども」
「抱き心地よくないですよ、僕は」
「私はいいわよ」
アイヴィーが見てたらもう俺は手足をもぎとられて閉じ込められるくらいはされるかもしれない、とんでもない罪悪感が襲ってくる。
罪人にするように、アンナさんは俺に手錠をかけた。万が一殴られないためって言ったけど、こんなものちょっと頑張れば千切れることくらいアンナさんは知っている。つまり、ただの趣味。
「何もしなくていいからね。寝てるだけでいいから」
服を全部脱がされて醜い全身を晒した。舐めるように、じろじろと。刺さる視線が恥ずかしい。
「……あの……」
「ブロウズくんて、思ったより体ゴツゴツして、男らしいなって。いつもなんだか自信なさげで申し訳なさそうにしてるから、ギャップがね」
「これでも、前より自信ついてマシになったほうなんですけど……」
「もっと自信もっていいわよ」
ぬらりとした液体がだぱだぱと股の間に落とされ、ゆっくりと指が入ってくる。いつも自分で準備するから変な感じだった。指が増えるたびに息がしにくくなる。いつもならこのあたりで首を閉められるけど、今日はいつもじゃない。
なんだか冷たくて硬い何かが入り込んできて、息を飲んだ。太腿が震える。
「あ、あ、あ、あの」
「そればっかりね。なに?」
入り込んできたかと思うとすぐ抜かれ、また入ってくる。
「く、首を、しめてほしくてっ」
「今手が塞がってるのよ」
低めのセクシーな声が堪らなかった、完全にスイッチ入って、情けない負け犬みたいな声を出しながらその声に夢中になっていた。何が出入りしているのかはよく見えない。
「ひゃ、ぁ、あ、の、あのっ」
「今度はどうしたの?」
「ナイフを……、ナイフとフォークをっ、突き立ててください」
苦しくないとどうにも物足りないのはアイヴィーのせい。すぐにテーブルにあった果物ナイフが振り上げられるが、アンナさんは躊躇する。
「殺すつもりで、お願いします」
風を切る音と共に。胸に突き刺さっていく食器が増えるたびに叫んで、血が抜けてく感触は心地よかった。呼吸するたびに穴が広がり、ベッドを赤く汚す。
俺の腹の中に入っているのはどうやら機械らしくて、モーター音を響かせながら中で暴れまわっていた。
血が足りなくなって倒れる寸前、頭がぼんやりしてきちんとものが見えなくなる。胸に突き立てられたナイフとフォークは部屋の明かりがオレンジ色なせいで、高級感ある輝き。辺りはもう甘い砂糖のにおいはしない、鉄のにおい。何度もナイフを振り上げられて胸も腹も腕も、たくさん穴が空いている。何度もやるうちにアンナさんもヒートアップしてきたらしく躊躇いは徐々になくなり、狂気に満ちた笑顔でその行為を楽しんでいた。
「こんな! のが! いいって! いうの! ホント、マゾなのね! ブロウズくんたら!」
「ひゃい、いいです、ぁう、っ、いたい、ごりごりしないで、骨ですっ」
泣きながら、突き刺さる小さな刃物の痛みを味わっていた。もう刺すところがないくらいになると腹の機械が抜かれた。
「背中も刺してあげるわよ」
促され、そう、……昨日とおなじように。手錠にくっついた鎖を引っ張り上げられ、無理やり膝立ちになるしかなかった。ずん、と皮膚を割いて肉に刺さる感覚が再び蘇る。思わず腹を丸めて、がくがく震えた。
「なに? もうダメなの? 悪魔っていったって、こんなものなのね!」
流石に悪魔でも魔法を使わなければ丈夫でなかなか死なない人間と同じってこと。いつものクセなのか、アイヴィーは俺の魔法臭を嫌がるのだ、自分と似たにおいがするかららしい。
はくはくと息をするだけで苦しくて仕方ないけど、その苦しさが気持ちいい。自分の体が死に近づいているというだけで興奮する。おかしい、狂ってる。
「ねえ? 生きてる?」
尻をぺちぺち叩かれ、過呼吸になりながらも必死で返事する。
「こんなことばかりさせてれば、こういう体になって当然ね」
また鎖を引っ張られて元通りのうつ伏せにされた。腹に空いてぐちゃぐちゃに割かれた傷に、前にアイヴィーが持ってて俺に使った機械……、男の性器を模した機械が腹に押し込まれ、腸が絡みつく。それが奥まで押し込まれ震え出すと、気持ち悪さとどうなるのかわからない不安で泣きそうだった。
「あ、あ、あ、あ!」
でもやっぱりどこか俺は興奮していた。アンナさんはいつの間にか下着姿になっていて、黒くてグロテスクな形をした、これまた男の性器を模したものがくっついた下着を身につけている。ゆっくり差し込まれ、圧迫感に苦しむしかない。心を構える前に足を抱えられて、何度もアンナさんの腰が引いては打ち付ける。皮膚と皮膚とがぶつかって軽やかな音。
「っ! っ、ふ、ぁ、あっ」
離したくなくて足でアンナさんの体に絡みついた。しながら首を締められることも男に組み伏せられることもないのははじめてで、その快感に集中するとびっくりするくらい気持ちいい。腹の壁に擦れるたびに魚みたく体は跳ね上がって痙攣のようになった。
「女の子みたいよ、ブロウズくん。足なんて巻きつけてひゃんひゃん喘いで、妹さんに教わったの?」
「ひゃいっ! そ……、です」
「ふうん、とんだ変態兄妹ね。どこ探したってこんな兄妹いないわよ。悪魔ってみんなそうなの?」
「ぁ、あ、あう、ち、ちが、ますっ」
「なに? なにが違うの?」
「ぼくら、が、おかし、ぁ」
話をする間も腰を揺さぶり、腹に挿さった機械で腹をかき混ぜた。
「みんなびっくりするわね、ブロウズくんのこんな姿見たら。きっと監視カメラのひとつやふたつ、あるんでしょうね。後でテープを貰おうかしら?」
「ひぎ! あああああっ! あ、あ、あぐ! ううううっ!」
腹に腕を突っ込まれ、かき混ぜる。痛みには強いつもりだけど、流石にこれは目を見開き体を引きつらせて叫んだ。
「いだ、ぃ、いだい! やめ、ぁう、たすけっ、ぁ……、あう! ひいいっ!」
おかしくなりそうだ、もうおかしくなってる? とにかく、痛いのだ。こわいのだ、次の瞬間何をされるのか自分がどうなるか全くわからないから。グロテスクな効果音と共に腹の中のものが揉まれる痛みに震える。涙が止まらなくなるくらい苦しいのなんて、いつものことだけど慣れそうにはない。
腰の動きだって止まらない。ギリギリまで引き、勢いよくくつっく。痛いのか気持ちいいのかわからなくて、混乱していた。気持ちよさで別の世界に行きそうになり、痛みで現実に戻ってくるような。どっちにしろリアクションは目を見開いて喘いでいれば正解らしいので。




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