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Uターン
気分だけカフェラッテ

犬みたいに口を開けて肩で息をしてないと窒息してしまいそうだ。何時間、何分経ったかわからないしそこまで時間が経ってないかもしれないけど、アイヴィーはまた俺の中で果てた。
俺のことなんかお構いなしで乱暴なんだけどそれが一番痛くて気持ちよくて頭がおかしくなりそうだった。犬がするみたいな形だったので最中にアイヴィーは人間に戻ったが、それが怖くて震えてると、それがなんだか興奮するみたいだった。頭はぺたりと床につけ、下半身はアイヴィーに持ち上げられている。服は汗でぐしゃぐしゃで気持ち悪いくらい肌に床に張り付いていた。
「……はあ……」
まだまだ腹の中のアイヴィーは満足しないらしくて、また熱を持ち出していた。油断したのか安心したのか忘れたのか、くるりと俺の体を回してじっと俺の顔を見る。
「顔つきが女みてーになってきたぞ、おまえ。こんな顔氏てるんじゃ、犯したくもなる」
「は……?」
頭が弱ってるのか、アイヴィーのいうことがいまいち理解できない。ゆっくりまた腰を押し込んできて声をあげると、アイヴィーはなんだかすごく嬉しそうだった。
鼻と鼻がぶつかるくらいに近づいて。
「キスしたい?」
「したいよ」
そりゃあ、そうさ。ゆっくり顔を上げてくちびるを追おうとすると。人差し指で塞がれた。
「まだだめな。あたしの上に乗れたらいいぞ」
わざとらしく顔をしかめると、ほっぺならいいと言われて軽く頬にキスをした。そのお返しか耳たぶをかりかり齧られながら開いた足、内ももを指で触れるか触れないかくらいに触られて鳥肌がたった。変な気分。くすぐったいなぁと思ってるうたに腰が引かれてて、腹の中のいろんな体液を押しのけてアイヴィーのそれが打ち付けてきて頭が吹き飛びそうだった。
「ひぁ!」
「ぼーっとしてんなよ」
肌の当たる音とぐちゃぐちゃといやらしい体液の混ざる音が鼓膜も犯してくる。アイヴィーも息を荒くして、ひとりよがりに腰を振った。アイヴィーを捕まえるみたいに足と腕を絡みつかせるが、うまく力が入らない。
「ま、まっ、て、って! ぁ、あ"! やだ!」
「きもちー、きもちーよ、チャコ」
自分の名前を呼ばれて、糸が切れたみたいになった。痛いくらいたちあがっていたそれが、だらりとだらしなく白濁を垂らして腹を汚す。
「ほんと、女に生まれたほうがよかったな。おまえは」
思い出したようにポケットから携帯を出して、何するんだろうと考えてたら、パシリとシャッター音。ぼんやりしてた意識がはっきりして、携帯に手を伸ばすが届かない。
「お、おいっ!」
携帯を持たない手を銃に変え、アイヴィーはそれを俺の眉間に押し付けた。……え、え!? ぜんぜんわかんない。なんで?
「もうちょっと後ろにさがって、笑ってピースしてみ」
「は? な、なんで」
「なんでもいいだろ」
ひらひらと人差し指が踊るのに怯えて、言われた通りにするがいきなりこんな状況で笑ってピースしろなんて、ピースはできても笑うなんて無理だ。
「もう一人、誰か居たらもうちょっとうまく撮れるんだけどなぁ。ま、さっきもたくさん撮れたからいいけど」
え? そんなのぜんぜん気づいてなかった、夢中すぎてわからなかったのか。ピースしてた二本の指が崩れて笑えなくてどうしよう、どういうこと? って、考えても全くわからない。またシャッターが切られて、アイヴィーはその写真にかなり満足したようだった。
「いいね。この顔、レイプっぽい」
「いい加減にしろったら!」
黙らせるためか腰を引き、押し込む。脳みそがしびれそうな快感にクラクラする。
「おれだって、怒る、ぞ……」
俺の話を聞く様子はない。カチカチ携帯いじって、何かムービーを見せてきた。

『あう、ぁ、あぐ、っ! はあっ、は、あああ"!』
デジャヴだ、あの、アニーとエドワードの、……。
『ははは、淫売みてえだぞ、おまえ。また締めたな、マゾか?』
『い"、いだい"、やめて、抜いて』
『抜けったって、おまえが食いついてんだろーが』

「……」
「見たか? 情けねえな、女に乗られてぎゃあぎゃあ子供みたいに騒いでさ、こんな奴はふさわしくない……。よな?」
ぞっとした。嘘だ、全部。アイヴィーは俺を、この地位から引き摺り下ろすための種を作っていたのだ。俺ばかりちやほやされて、俺ばかりもてはやされたからか、流れる血は同じのはずなのに。
でも、こんな仕打ちされても、そう犯されても、殴れないんだ。一度好きになった人を簡単に殴ることができるほど落ちぶれていないことに安心した。
「どういうつもり?」
「愛情表現」
さらりと口にした綺麗な言葉にゲスな所業。
「おまえはあたしのだってマーキングしてんの」
「そ、それなら、そんなもの撮らなくたって」
「おまえ、こっちの危険をわかってないだろ」
アイヴィーが嘘をついて自分を正当化しているようにしか感じられなかった。それでも不思議と怒りは湧いてこなくて、たくさんの疑問と落胆した気持ち。アイヴィーなら、きょうだいの俺たちなら信じあっても構わないんだと思ったから。
「ニルスおじさんなんて、おまえの世話係で収まるような器じゃないってこと。なんでそんな人を母さんは世話係にしたのかわかってる? なんであたしは戦いは苦手な親父なのか?」
「……」
「味方だと思ってぜんぶ安心すんなってこと。おまえを殺しはしないけど、リンチやレイプなんて珍しいことじゃないんだ。おまえはかなり目立つし、人の少ない所で一人ふらふらしてたら間違いなく、なんかされるぞ」
「写真いらないだろ!」
「んー。まあ、これは最終兵器ね。あたしの趣味と、初夜記念。こんなの女の子に見せたらドン引きだぜ、男ならまだしも……」
「消してよ」
「いいけど、また撮るぞ?」
どうやっても無駄らしい。俺の弱みを握ってもそんなにいいこと無いと思うんだけどな。恥ずかしくて死にそうで、くちびるを噛むと血が流れる。生臭い味がした口は一気に鉄の味。
「ちょっとは可愛い顔できるんじゃん」
シャッター。止めようとも思わない。
「これ待ち受けにしよっかな、恋人どーしみたいで、うん。可愛い」
可愛いって言われたらお腹の奥がきゅんきゅんして、こんな状況にも関わらず照れてしまう。見られたくなくて顔を逸らすけど、アイヴィーがぎゅっと両腕で俺の肩を捕まえた。
「かわいーい。動物みたい。可愛いって言われんの好き?」
そんなに楽しそうで嬉しそうならいいか、なんて思ってしまうくらいにはデレデレ。ふわふわの綿あめみたいな髪がこすれる。
潰したカエルみたいに汚い喘ぎ声をひねり出していたけど、アイヴィーに体中触られて可愛い可愛いって言われてたら、ほんとに女の子になったような気分。高い声が自然に出て、もっと可愛いって言われたかった。そのおかげかシャッターが切る回数は増え、何度もムービーを撮られた。
アイヴィーの気が済むまでそれは続いて、事が終わる頃には放心状態でもうくたくただった。何事もなかったみたいに暴れまくって汚れた部屋と狼の毛の処理をしていた。狼の毛、アイヴィーの毛は柔らかいから、ふわふわ空中に浮いて口の中に入ったりするらしい。
あと片付けるのは俺だけ、になると、無理矢理起こして、部屋に備え付けられた質素なシャワールームに入れられた。
ぼーっとする意識、汗だらけの体を目覚めさせるように冷たい水の矢が刺さる。
震える体を奮い立たせ、ゆっくり、立ち上がるというよりは這い上がるといったほうが正しいか。壁に手を当て、背中で受けた。ごわごわの質の悪いスポンジみたいな黒髪が濡れてしっとりする。
「腹んなかに、ちょっと残しとけよ。全部流したら意味ないからな」
て、これ……。指ですくってまじまじと見る。見た目には男のものと変わらないけど……?
「あのさ、子どもってつくれるの?」
「はあ? おまえが妊娠するわけねえだろ」
「そうじゃなくって」
察したのか、少し考えて。
「やったことないけど、たぶん、できないことはない。虫とおんなじようなもんだからさ、これ。もしかしたらできるかもしれないな」
「ふうん」
「そんなこと聞いて、どうすんだ」
「至って普通の疑問だと思うよ」
体がだるい。腰と、うん、腹が痛い。いろんなとこ噛まれたし、引っかかれてたくさん生傷が残ってしまった。べつにそこまで怪我は気にしないけど。すぐに治るし。なんか、一線超えちゃってこれから大変になりそう。
なかなか動けないので察したのか、アイヴィーが背中を流してくれたけど、めまいしそうなくらい痛かった。
フラフラのまま着替えてベッドに飛び込んだ。……寝よう。頭痛いし、おなか痛いし。
すぐにアイヴィーもベッドの中に入ってきて、ふとももの間に手を伸ばしてくる。
「もうむりだって」
「冗談」
払いのける。ベッドの二メートルちょっとが全世界だった。
「まだ、あたしの事はすきか?」
実に考えるのが難しい質問で、様々なことが頭の中を駆け巡る。最初はすっごい仲が悪くて何かするたび舌打ちされてたな。写真もたくさん撮られたし、もうおれはアイヴィーに逆らえないのだ。
「うん」
「本当か? あたしは、おまえにとんでもないことをいくつもしたぞ。脅しもかけたし、無理矢理犯したし、暴言もたくさん吐いた。これは脅しじゃない。断るなら、おまえにあたしの携帯を渡すよ。本当に、すきか?」
「うん」
答えた瞬間、どこかで何かが切れたような感覚。
アイヴィーの目に涙が浮かんでいて、泣きたいのはこっちだよと思いつつ涙を拭ってやった。
「本気なんだな。そんなに好きで居てくれる人に出会えてあたしは、ほんとに幸せものだと思う。おまえはあたしのものだ、誰にもわたすものか」
「うん……」
疲れがひどく溜まってるらしく、こんな大事な時間なのにうとうとしだした。弱々しくアイヴィーに抱きつくとアイヴィーは強く俺を捕まえて、アイヴィーはすごく柔らかくて甘いにおいがやっぱりして、すごく心地よくてそのまま意識を手放した。




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