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Uターン
ボニータとロゼ
「……あなたのこと、あたしはきっと嫌い」
「あたしはそうでもないわ」
「うん。直接あたしは関係ないけど、でも……、大切な人を傷つけたんだもの」
「それを言うためだけにあたしの所へ来たのではないでしょ」
「そうね」
「言ってみなさい」
「あなたを、彼と同じくらい苦しめてやろうかと思った」
「加害者はあたしだけじゃないわ」
「知ってる、あなたの弟も、そうよ。同じ目だなんて生易しいことは言わない。……殺して、やる」
「……」
「……」
「彼はそれを望んでいるのかしら?」
「知らない。全部あたしが勝手にやったのよ」
「いいことを二つ教えてあげるわ」
「……なによ」
「彼はテディが居ないと生きられないの」
「……どうしてなの」
「まずね、ひとつめ。あの体、手足にかなり負担がかかるの。疲れを感じることができないから、大丈夫だと思ってずっと働くわ。そのうち足や手の筋肉が壊れて、痛みを感じて、歩いたりできなくなる。その前に、テディは足を付け替えてあげてるのよ」
「不死身なんじゃないの! 騙したのね」
「いいえ。足が壊れていても命はあるわよ。ゾンビって、そもそも使い捨ての労働用だから。簡単にできてるし簡単に使えなくなるけど、簡単に作ることができる」
「あんたたち姉弟って、人の心があると思えない。血が流れてるとは思えない」
「だって、あたしたちは人じゃないもの。あなたもでしょ?」
「そうね、あたしも人じゃない。でもあたしは心を失ってないわ。大好きな彼を傷つけたあんたたちを許すことができない」
「……ふーん。じゃあテディを殺してごらんなさい。あたしは地の果てまであなたを追いかけて、はらわたを引きずり出してあげる」
「恋人を作ったことがないからわからないのよ」
「あたし、テディを愛しているわ。弟としてじゃない、一人の男として」
「ブラコン自慢なんてどうでもいいのよ。で、ふたつ目のいいことって何よ」
「ええ。教えてあげる。ふたつめ、人を嫌いになる時は、自分一人で嫌いになりなさい」
「……は?」
「あなた、影響されすぎる。持ってるiPod、中身は彼の好きなバンドばかりね。服はケチャップがかわいいって言ったものだけ。アクセサリーだってそうだわ。人のまねばかり」
「だって、あのバンド、彼と関係なしにいいのよ。服だって一緒に買いにいってかわいいって言ったものにするのは当たり前じゃない?」
「でもあなた、自分だけで選ぶことができなくなりつつあるわ」
「だって、不安だもの」
「それが愚かだと言っているのよ」
「不安でなにが悪いって言うの。みんな不安くらいあるでしょ。あたしはそれが皆より少し多いって、それだけでしょ?」
「そんなことをしていたら、一人でやらねばならない時苦しむことになるわ」
「一人は不安よ」
「だって、あなたという人格は完全に他人の情報のみでできているんだものね。不安でなければおかしいわ」
「それ以上あたしを侮辱してみなさい、喉を噛み千切るわよ」
「その台詞、どこで見たものなのかしらね……?」
「……!!!」




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あきゅろす。
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