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Uターン
マチとロゼ
「……………!」
「!」
「何よ」
「いえ」
「あんまり見るとあんたも食べるよ」
「私、獣人ではないので」
「なんでもいいから」
「食事ですか」
「分かってるでしょ」
「……まあ」
「食事中よ。邪魔しないで」
「この城周辺は私の主人の場所なんです」
「ふーん」
「城ができた時からです」
「どけって?」
「主人の邪魔になるなら」
「してないでしょうよ」
「そのキツネ、野生ではないので殺されると困ります」
「何に使うのよ、こんなの」
「キツネのはらわたを薬のために使います。よく使うので増やして飼ってます」
「はらわたならくれてやるわ。あたし、これ好きじゃないのよね」
「汚れたものは使えません」
「……あんたの主人、魔女か悪魔か、どっちかでしょ」
「まあ」
「やっぱり。呪いでもかかってんの?かわいそーに、死ぬまで馬車馬のように働かされるんだ」
「それが私の幸せですから」
「あんなキチガイな化け物の世話をするなんて、ほんと、かわいそうとしか。イッちゃってる」
「あなた、噂の狼ですか」
「噂あ?」
「遠い砂漠の向こうから、悪魔でも獣人でもない狼がやって来て好き勝手暴れてるとか」
「暴れてるつもりはないけど?」
「魔女を二人殺して、一人怪我させてますよね」
「よおくご存知で」
「魔女をなめないほうがいいですよ。すぐに仲間の死は分かります」
「ヤツら、隙がありすぎるんだもの。詠唱中に首をガブリよ。一瞬一瞬」
「何のために?」
「あんたに言ってもあたしになんのメリットもないじゃない」
「……」
「うーん。ここの魔女に会わせてくれるんなら話してもいいかな」
「いいですよ」
「いいの?」
「襲われたら私が守るだけですから」
「おもしろいね、あんた」
「初めて言われました」
「……あたしの一族、狼人間、ヒトでも動物でも獣人でも悪魔でもないから、他と溶け込めないのよね。どうしてあたし達が生まれたかっていうと、突然変異とかじゃなくて、魔女か悪魔の呪いなの」
「呪い」
「そう。昔、女の魔法使いに恋した男が居てね、魔法使いは男が面倒で仕方なかったから、狼を好きになるように呪いをかけたの。それで生まれたのがあたしの一族」
「……」
「ヒトばかりの場所で生まれたから、砂漠の近くまで追いやられたの。今更街に来てもしくみが分からないし、受け入れてもらえないでしょ。偵察。あと、呪いがとけるなら、とかしたい」
「だから魔女を?」
「呪いをとく魔法があるかもしれないからね」
「殺さなくったってよかったんじゃあないですか」
「向こうから仕掛けてきたのよ。あたしを見てすぐに詠唱するの、ひどい話よね」
「あなたは自分の恐ろしさを理解できていないようですね。血と泥だらけの子ども、怖がらないほうがおかしいものです」
「あ、そ。……あたしの会った魔女たちに強い魔女を教えなさいと言ったら『レディ・ケチャップ』とみんな言ったのだけど。もしかしなくても、おたくでしょう」
「……呼びます。少し、お待ちくださいね」




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