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Uターン
テディとケチャップ
「不機嫌そうだね」
「あなたが来たからね」
「そりゃ、どーも」
「マイケルはいないわ」
「においがするけど」
「気が狂ったんでしょう」
「今更言う事かい?」
「……何の用」
「いや、彼がね、最近どうも体の調子が悪いようでね。新しい四肢をプレゼントしてやろうと思ったのさ」
「今度から私がやる」
「君は魔女にしちゃあよくやる方だ、が。君に彼の四肢の結合方法が理解できるとは思えないね」
「やってみなくちゃわからないではないの」
「失敗したら彼は死ぬよ、僕なら一時間ほどでミスなく結合できるんだ」
「どんな方法よ、言ってみなさい」
「『糸』さ。蜘蛛の糸に彼の遺伝子を塗りつける」
「……遺伝子」
「元人間だからね、せめて接着面だけでも合わせないと拒絶反応が出て死ぬ。僕は彼の遺伝子を記憶できる、ひとつも間違えずにね」
「それくらい私にも……」
「なめてるのかい。僕でも完全に使えるようになるために五十年は様々な人間の遺伝子を見たけど」
「……」
「それにな、愛の違いだよ。僕は彼の遺伝子の並びひとつひとつでさえ、愛すことができる」
「変態」
「そうでしょうとも」
「愛なら負けないわ」
「僕は彼が生まれてから今までずっと見てきたんだ。負けるものか。そもそもの問題点はまた別にあるが……」
「なんなのよ」
「君は彼のサイズに合う新鮮な四肢を彼が調子悪いと言ってすぐに用意できるのかい?」
「そ、それは……」
「無理だろ?殺しでもしなけりゃさ」
「あなたはどこからそれを?」
「別の世界から。腐るくらいヒトがいる世界があってね。ひとりやふたり死んだところで騒ぎもしない」
「……ずるいわね」
「僕が必要なんだよ」
「マイケルはあなたのこと、怖がっていたわ」
「昔は、ね。今は態度が変わって優しくなった」
「大人になっただけでしょう」
「……君は本当に僕のことが気に入らないようだ」
「マイケルの幸せを壊したのはあなたですもの」
「でもそうしなけりゃ君と彼が出会う事はなかった」
「いいのよ」
「なにがさ」
「出会わないほうが幸せだったんだから」
「まあ、ねえ」
「最低ね、あなた。自分の都合だけで家族と引き離して、殺して、体をいじくりまわして」
「自分の都合だけで人を城に縛り付けている人に言われたくなかったな」
「行き場がなかったのを助けただけよ……」
「過労のせいで四肢がすぐにダメになるのさ。君のせいなんだよ」
「……疲れた様子はなかったわ」
「隠すに決まってるじゃないか」
「なに、あなた。あなたも私の事気に入らないんじゃない」
「もちろんさ。今すぐにでもここから引き離して僕のうちに連れてゆきたいくらい。でも、まだできないみたいだ」
「連れていったら殺すんでしょう、また」
「かもしれない」
「絶対に連れていかせないから」
「言うのは勝手だよ」
「あなたもね」
「じゃ、僕はあと一時間ほどお邪魔してるよ」
「ふん……」


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あきゅろす。
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