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*Special*
trick or treat !!!


ここは、ホロウタウン。

祭りごとが大好きな小さな世界の小さな街。

街は赤やオレンジ。紫に黒。

禍々しいようなそうでもないようないろいろな色に包まれていた。

南瓜で作られたジャック・オブ・ランタンのほのかな光が家々の玄関を照らしている。

そんな街のとある小さな薬屋の話でもしようか。





trick or treat !!!



ガチャ。

突然の来訪。

そこに現れたのは…招かれざる客だった。



「……………。」

シーン。

さっきまで和気あいあいとした雰囲気が、氷点下まで下がった。


「なんなんだね、君達。せっかく僕がわざわざ遊びに来てあげたのに失礼じゃないか。」

いきなり現れた来訪者は、偉そうにふん反り返る。

しかも、いつの間にかちゃっかりと家の中に入っていた。


「なぜ、お前がここに来る…私は呼んだおぼえはないぞ。シルク。」

赤いフードを着た見掛けは少女の魔女シルビアはギロッと来訪者を睨み付ける。


「そーよ。シルビアの言う通り、あなたを呼んだ覚えはないわ。とっとと帰りなさいよ。」

そして、シルビアに抱き着く白衣を着て花を纏っている女性ベルガモットはそう言う。


「キー!!!ベルガモット、貴女何様ですか!!?」

来訪者シルクは歯がみする。


「貴方こそ何様よ!不法侵入よ。チルルちゃんポリスに連絡しちゃって。」

チルルと呼ばれたメイド風の女性は突然、自分に白羽の矢が立ったので


「えっ…でも、その方。シルビア様とミューラ博士のお知り合いではないのですか?」

と少しオロオロしながらそう言う。


「そんなの関係な…『そうなんですよ!私は、このチビ魔女シルビアと花盛りベルガモットと幼馴染なのですよ!』」

ベルガモットが言いかけたのを強引に捩じ伏せシルクは言う。

ベルガモットは爆発寸前だ。


「へぇー、そうなんや〜。意外やなぁ。2人の幼馴染には見えへんなぁ。しかも、男のくせに弱そうやな〜あんちゃん。」

狼男のティモはケラケラと笑う。

それを聞いてシルクは


「なっ、なんなんですか!?この失礼な犬は。無礼にもほどがある。私はかの有名な"白銀の魔法使い"シルク・ド・ジュレですよ!」

とまた偉そうにふん反り返る。


「…またの名を、お漏らしシルク。」

シルビアは、ワーハッハッハッと高笑いしているシルクにぼそりとそう言う。


「なっ…!!?」

シルク赤面。


「へぇ〜、そうなんやぁ。」

ティモは、またケラケラと笑う。


「ちなみに、10歳までおねしょしてたぞ。」

シルビアは、またもや追い討ちをかける。


「キー!!!それよりも、お菓子下さらないと悪戯しますよ。それも、とびっきり最悪な嫌がらせと言う名の悪戯を…。」

シルクは、フフフと不気味に笑いながら言う。

ちなみに、かけている眼鏡もキランと一瞬輝いているかのように見えた。


「やっぱり、それが目的だったのね。じゃあ、シルクtrick or treat。」

ベルガモットは、少し呆れつつそう聞く。


「何、バカな事言ってるんですか。私なんかそんな事見越してお菓子をたくさん持って…あれ?ない。どこだ?」

シルクは、マントやら何やらのポケットを探り出す。


「あら〜。ないじゃない。じゃあ、悪戯しなきゃ♪とびっきり素敵な…ねぇ、シルビア?」

「あぁ。とびっきりなのをな。」

シルビアは、少し口角を上げる。


「えっ、いや…その。」

シルクは、ジリジリと後退する。

それに合わせ、シルビアとベルガモットはジリジリと前進する。


「さぁ…お菓子くれなきゃ悪戯するぞっ♪」

ベルガモットはにっこりと笑う。


「おい、犬。出口を塞げ。」

「はいよ。これで、ええ?」

ティモは、さすが犬…いや、狼。

見事な早さで出口を塞ぐ。

「ヒッ、ヒ―――!!!」

「ちょうど、新しい薬のサンプルが欲しかったんですわ♪」

チルルは、何やら怪しい注射器をどこからか取出す。

「えっ、いや…その。」

シルクは冷や汗をたらす。


「はーい。私のかわいいベイビーちゃんの餌になってもらおうかしら?」

ベルガモットは、小さいがとても凶暴な植物動物を取出す。


「うむ…新しい魔法の実験台にするか。」

シルビアは杖を取出し構える。


「ギッ、ギャ―――――!!!」





秋の収穫を祝うハロウィンの日。

ホロウタウンには、みんなの楽しげな笑い声と一人の男の悲痛な叫びが響いていた。


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