記念小説・捧げ物
くんかクンクン(2)
はぁ…っとため息を付きながら、
オレンジジュースのストローを指先で弄んでいると、
ふわりと優しく撫でるように金色の頭に手が乗せられた。

「どうした?暗い顔して。」
「なんだ…グレイか…。」
「おい…。ひでぇな…。」

あからさまにガッカリしたような目をルーシィから向けられ、グレイは小さく項垂れた。

「ハハハ。ごめんごめん。」
「いいけどよ…。なんだ?ナツだと思ったか?」
「別に…そんなんじゃないわよ。」

氷が溶け薄くなったオレンジジュースを啜りながら、ルーシィはそう呟いた。
ふっと、笑みを零しながら、グレイはその顔を覗き込むように問いかけた。

「ナツとケンカでもしたのか?」
「してない…。」
「でも、不機嫌なのはナツのせいなんだろ?」
「違うもん…。」

プクリと頬を膨らまし、
その言葉とは裏腹に明らかに不機嫌な顔のルーシィに
グレイは苦笑しながらクシャリと金色の髪を撫でてやった。

「ほら、姫さん。話してみ?」
「……。いつもね?簡単な料理しか作ってあげてなかったから…」
「あぁ…。」
「何か手のこんだもの…作ってあげようと思って。」
「あぁ…。」
「今日ね…準備して来たの…。」
「そうか…。」

カラン…と。コップの氷が溶ける音が響いた。
ストローでそれをクルクルと掻き回しながら、ルーシィがポツリと呟いた。

「ナツ…リサーナと仕事行ったって。」
「は?」
「せっかく準備したのに、無駄になちゃった。」

目尻に薄っすらと涙を浮かべ、悲しそうに微笑むルーシィに、
グレイの胸がギュウっと締め付けられた。

金色の髪を撫でていた手を、華奢な肩へと降ろし…
自分の方へとグイッと引き寄せ、グレイは耳元で囁いた。

「それ…俺が食ってもいいか?」
「へ?……うん。食べてくれる?」
「あぁ。もちろんだ。」

これで無駄にしなくてすむわ…。と嬉しそうに微笑み、
冷んやりとした腕へと絡みついてくるルーシィに
グレイはホッと胸を撫で下ろし、
誰にも聞き取れないであろう音量でポツリと呟いた。

「ナツのバカが…。知らねぇからな。」

ここにはいない、炎の滅竜魔導士へと苦笑を浮かべたのだった。



ルーちゃんを慰めるのに必死すぎて、思わず服を脱ぎ忘れるグレイさん…。
てか、いちごが忘れてた。あぁ…グレイのアイデンティティーが…。

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あきゅろす。
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