記念小説・捧げ物
おまけ
明日の準備があるからと先に帰宅したルーシィを見送った後に、
残されたメンバーが口々に言い出し始めた。

「ルーシィ…本気にしちゃったね。」
「まぁ…ルーちゃんだしね…。」
「あい。おいら適当に言っただけなのに。」
「アレはどう考えても『牛』じゃねぇよな…。」
「うむ。しかし、皆も面白がって乗ってただろう。」

ハッピーのアドリブに、次々と便乗していった、
悪戯…もとい、ナツ絡みで
ルーシィをからかう事が大好物のこのメンバー。

まんまとその策に嵌められたなんて、
露ほどにも思わず、すんなりと呑み込んだルーシィ。

幾度となく同じような目に合っても、仲間を疑う事をしない、
そんなルーシィだからこそ、からかいがいがあって面白い。

そしてそんな風にからかわれ、悪戯される事を
最後には笑って許してくれるルーシィだからこそ、愛しくて仕方が無い。

大好きな彼女の為だからこその、この愛情のこもった悪戯なのだ。

「こんな簡単にルーシィを
ナツのプレゼントに出来るとは思わなかったわ。」
「ハッピーのナイスアシストのおかげだな。」
「あいさ!でもルーシィ本当に気付かないなんて…プクク。」
「ジュビアはすぐにわかりました。ルーシィが鈍感なだけです。」
「『…ゥ…シ…』って『るぅしぃ』だろ?』
「まぁ…何はともあれ、ルーちゃんがクリスマスに
ナツの家に行く事になったんだし、いいんじゃない?」

ニヤニヤしながらレビィは、まだ隅に転がる桜頭をチラリと見た。

「そうですね。これでナツさんもサンタがいるって信じてくれますね。」
「うん。アスカちゃんのサンタクロースの夢は守られるね。」
「みんな、ありがとうね。」
「いいのよビスカ。」

小さな少女の夢が壊される心配が無くなり、
みんなホッと胸を撫で下ろした。

「つうかよ、ルーシィが欲しいって…。」
「どうしたの?グレイ。」
「いや、あいつどうゆうつもりで言ったのかと思ってな?」
「んもう。グレイってば…。野暮な事言うんじゃないよ。」
「うおっ!?カナ!突然現れんなよ…。」
「そりゃあんた、欲しいってそのまんまの意味でしょ。」
「いや、そうだろうけど…。あいつヤリ方知ってんのか?」
「マカオ達からその辺の話は多少聞いてるんじゃないかい?」
「成る程な…。でも多少で大丈夫か?ルーシィが可哀想だろ。」
「ナツの場合は、本能で身体が動くでしょ。」
「ありえるな…。」

ほとんど、本能で生きているような奴だ。
知識はなくとも、どうにかなるだろう…。
ただ、ルーシィが大丈夫かは別問題だが…。

「にしても…ここまでお膳立てしたんだからねぇ。」
「これで、何にも進展なかったら…。はぁ…。」
「そうなったら、『ヘタレ称号』はグレイからナツに継承ね。」
「待て。いつオレに『ヘタレ称号』が付いたんだよ!」
「え?前からだけど。」
「え?気が付かなかったの?」
「グレイ様はヘタレなんかじゃありません!」
「え?だってヘタレだから、未だにジュビアに手が出せないんでしょ?」
「違います!純愛なんです!!」
「おいら、それ…違うと思うよ?ジュビア…。」

ぎゃあぎゃあと騒ぎ立てる面々の声を背中で聞きながら、
桜頭は小さく息を吐き出した。

(たく…。好き勝手言いやがって。)

誰がヘタレだ。
あんな、変態氷野郎と一緒にするな。
純愛だから、手が出せねぇ?
違うだろ。
好きだからこそ、
全部が欲しいと思うんだろうが…。

そんな事をボンヤリ考えていると、
カウンターの方からミラとアスカの声が聞こえてきた。

(そう言えば…アスカの奴、何で急にオレにサンタの話をしてきたんだ?)

「ナツお兄ちゃんサンタクロースいるって信じてくれたよ。」
「良かったわね。」

そう言えば何日か前に、ミラから聞かれた気がする。
『ナツはサンタクロースいると思う?』

まさか…そうか…。
あの時から全て魔人に仕組まれていたのか…。

はぁーっとナツは先ほどよりも深く息を吐き出した。

そしてクリスマスの夜に、美味しい香りのするローストビーフを抱え、
相変わらず露出の高いサンタのコスチュームに身を包み現れるであろう
金髪の少女を想い描いたナツは、ふっと笑みを漏らした。

(早く…明日になんねぇかな?)

愛しいサンタが真っ直ぐに自分の元へと来られるよう、
星空の綺麗な夜になることを願った。



だからさ。ヘタレで手が出せない ≠ 純愛 だってば。
そして、メンバーすら気が付いていなかった本当の計画が、魔人によって発動されていたとな。
んで、おまけなのに長いってゆうね…。


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あきゅろす。
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