小説 (短編・中編)
ORION(6)
ぐっと押し黙ってしまったナツが心配になり、
ルーシィはくしゃりと桜色の髪を撫で、そっと胸に抱きしめた。

「何も話したくないなら、無理には聞かないけど…。
辛くて押し潰されそうな時に、涙を流す事は恥ずかしい事じゃないのよ。
思い切り泣いて泣いて…苦しさも不安も全部、涙と一緒に流してしまえばいい。」

子供をあやすように、優しい声色で。
トントンとゆっくり背中を叩きながらルーシィは言った。

「泣くなんて…情けねぇ。
男なんだから、んな弱いトコ…見せられるか」

(好きな奴の前で弱音なんか吐けるわけねぇだろ…)

小刻みに震える肩を、鱗模様のマフラー越しに、ギュッと抱きしめ、
ルーシィはゆっくりと言葉を紡ぐ。

「バカねぇ…。
あんたの情けない所も弱い所も全部受け止めてあげるわよ。
それにあたしは、弱さを見せる事が情けないとは思わないわよ。
本当に強い人じゃないと、
殻を脱ぎ捨てて全てをさらけ出すなんてできないと思うもの…。」
「…。」
「弱さを見せない事が強い訳じゃないのよ。」
「…。」
「心から信頼している相手だからこそ、弱さも全て見せる事ができるんじゃない?」
「…。」
「ナツにとって、あたしはそうゆう存在には…なれないの…かな?」

見上げると、哀しそうに、寂しそうに…
でも優しく包み込むようなルーシィの微笑みに、
思考の全てを手放した。

「ル…シィ…」

ブランと垂れ下がっていた腕を、
細い腰に回し、折れそうなくらいに強く抱き寄せ…
柔らかいその大きな胸にポフリと顔をうずめ、
己の中に渦巻くどす黒い様々な感情を…不安を…
涙と共に全て流し出した。

トクン…トクン…
ルーシィの鼓動が心地好い。
優しく包み込んでくれるルーシィの温もりに安心する。
不安で黒く固まっていた心が、じんわり融けていく…。

(やっぱりルーシィといると落ち着く。絶対に離すもんか…。)

「ルーシィ…暖っけぇ」

閉じた瞼の裏には、先程見上げた星の様に眩しく輝くルーシィの笑顔が映った。

〈END〉



ルーちゃんの胸にポフンて…うらやまs…

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あきゅろす。
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