小説 (短編・中編)
ORION(4)
白く細い指の指す先に目を向けると、
吸い込まれそうな程に煌びやかに瞬く満天の星屑が、
夜空に散らばる宝石のようにキラキラと輝いている。
すると…フッと、それは一瞬でとても儚く消え落ちる一筋の光。

「あ…。」

(なんだ…。胸にポッカリ穴が空いたみたいだ。
あんなに輝いていたのに…。消えるのは一瞬なんだな…。)

「いっぱい流れるわねぇ。さすが流星群だわ。キレイねぇ…。」
と、桜髪の少年に問いかけると、
ポタリ。頬に雫がこぼれ落ちてきた。

「え?」

手で頬を拭ってみる。

(濡れて…る?)

バッとナツを見上げ、ルーシィは驚きに目を見開いた。

思わず寒いのも忘れ、暖かい腕の中から抜け出し、
ナツと向かい合うと、膝立ちなって、
ハラハラと吊り目の双眼からこぼれ落ちる涙を拭ってやる。

「ナ…ナツ?どうしたの?どっか痛いの?大丈夫?」

心配そうに覗き込む琥珀色の瞳に、
知らぬ間に自分が泣いていた事に気が付き恥ずかしくなり、
「なんでもねぇよ。」
と、横を向きグイッと乱暴に涙を拭う。

「なんでもないって…。
あんた、来た時から様子が変だったわよ。何かあったんじゃないの?」

自分の事には、超が付くほど鈍感なくせに…
何故、他人の痛みにはこんなにも鋭いのだろうか。

そぅ思い、
口を真一文字に引き伸ばし、琥珀色の大きな瞳をジッと見据える。

『ルーシィが突然自分の前から居なくなる夢を見た』

思い返せば、事の始まりはそれだ。
あれは夢なのに…。
ルーシィは今ちゃんと目の前にいるのに…。

何も言わず自分の前から姿を消したイグニール。
生きて戻ってきたが、あの時は死んでしまったと思っていたリサーナ。

大事な家族が突然目の前から消えてしまう、哀しさ…不安…孤独…
そして、引き留める事のできなかった悔しさ。

いつの日か会えると信じていても…
生きて戻ってきてくれた今も…
目の前からいなくなった、あの瞬間の恐怖を忘れる事はできない。

あんな思いをするのならば…
もう…二度と大切な人は作らなければいい。

そう…思っていたはずなのに。



ルーちゃんにやっと会えて嬉しいはずなのに、不安が勝るトラウマに縛られなっちゃん。

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