小説 (短編・中編)
ORION(2)
通い慣れた道を急いで駆け抜け、想い人の部屋の窓を見上げる。

「電気…消えてらぁ。もぉ寝たか?」

慣れた手つきで壁をよじ登り、
いつもの締まりの甘い窓の鍵を器用に外し、中へ侵入する。
眠っているであろうその人の元へと駆け寄るが…
ベッドはもぬけの殻だった。

「風呂か?」

言うが早いか、すぐさま浴室を覗くが誰もいない。
意識を集中するが、部屋の中に人の気配は全くしない。

「どこ…行ったんだ…?」

ドクンッ。不意に鼓動が激しく脈打つ。
刹那…空気すら薄くなったように感じる。
(んだこれ。息がうまくできねぇ…)

先程見た夢の中のルーシィが、鮮明に記憶の中に蘇る。
『ナツ…。さようなら。』
追いつけない背中。
届かない手。
暗闇に消えゆくルーシィ…。
突如、今の状況と夢がリンクする。

(嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ…)
わずかに残るルーシィの匂いを辿り、無我夢中で走り、探し回る。

「ルーシィどこだ!どこに行ったんだ!黙って消えるな。
イグニールみたいに…俺を置いて行かないでくれ…。」



ルーちゃんいなくなっちゃった。

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