小説 (短編・中編)
ゲシュタルト崩壊(4)
「………。」

視線を感じ顔を上げると…、
ニコニコと何か言いたそうな魔人の笑顔と、
いつの間に隣に座っていたのか…
魔人に負けない位の含みのある、ニヤニヤとやらしい笑顔の妹。

「うっ…。」

この二人にかかわると、碌な事はない。
それは、からかわれるなんて可愛いものではないだろう。

ルーシィはクルリとギルド内を見渡す。
と、茶色の猫を膝に抱き、小説を読む親友を見つけた。
助かったとばかりに、銀髪の姉妹の視線から逃げるように、
スツールから降り、奥の円卓へ走った。

「レビィちゃん。何読んでるの?」
と声を掛けながら、隣に座る。

「あ、ルーちゃん。この前のね、
魔法使いが伝説の杖を探しに行く小説の続きだよ。新刊が出てたの。」
と、嬉しそうに答えてくれる。
「あぁ!それね!あたしも今読んでたの。
まさかあの騎士が黒幕だったなんてねぇ…。」
と、小説の感想を楽しく語り合う。

ひとしきり小説の話題を終えると…
「そういえばルーちゃん、ひとりだね?ナツはどうしたの?」
いつもベッタリの桜色がそこに居ない事が急に気になったのか、
本日何度となく聞いたそのフレーズを再び耳にする。

「確かに珍しいな。」
と、親友の膝の上の茶猫まで相槌を打つしまつ。

「レビィちゃん…。リリーまで…。」
深々と溜息をついていると、頭上から、

「お!バニーひとりか?火竜はどうした?ついに別れたか?ギヒッ。」
っと、とんでもない台詞が落ちてきた。

「ちょっ…。ガジル!別れたなんて縁起でもないこと言わないの!!」
と、斜め上のフォローをする親友。

「なんだ?別れてないのか。
フラれた火竜が弱ってたら面白くなると思ったのになぁ。ギヒッ。」
と、不適に笑う鉄竜に向かって、

「だぁ〜かぁ〜らぁ〜!分かれるとかの前に付き合ってないし!!」
と、捲し立てる。

「またまたぁ。ルーちゃんたらぁ…。
いっつもナツとあんなにイチャイチャしてるくせにぃ〜」
と、肩をバンバン叩く親友をジトリ睨み付けていると、
何か思い出したように鉄竜が口を開く。

「そうだ…。んなアホみたいな惚気話聞きにきたんじゃねぇや。
レビィ、リリー。この仕事行くぞ。
デカくなりてぇんだろ?ほれ、立て。急ぐぞ。列車に乗り遅れる。」
と、ひょいと後ろ襟首を掴み、小柄な身体を軽々と持ち上げた。

「ちょっとぉ〜!降ろしてガジル〜!自分で歩けるから!!」
と、頬を赤く染めながら両手足をバタつかせてギルドの外へと出て行く二人と一匹を見つめ、

「自分たちだって…イチャイチャしてるじゃない。」
と、今はもう姿の見えないふたりに、文句を垂れた。



ナツとルーシィが別れる時は、ナツがフラれるのがデフォなガジルくん(笑)


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あきゅろす。
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