小説 (短編・中編)
ORION(3)
森を駆け抜けると、不意に目の前がひらける…。
そこは、視界を遮る物が何もないだだっ広い草原だった。
真っ暗な草原の真ん中で月明かりに照らされ、
キラキラと輝く金糸を見つけ、目を見開く。

「ルーシィ!んな時間に…こんな所で何やってんだよ!!」
怒気を含んだ口調でズンズンと詰め寄る。
「ビックリしたぁ。ナツこそどうしたのよ?そんなに息切らして…。」
突然現れた桜髪の少年を、驚きの目で見上げる。

ルーシィが…急にいなくなって不安になり、必死に探していた。
なんて、恥ずかしくて言えるわけもなく、口ごもりながら答える。

「いぁ…別に…。つか…だから、何してんだよ?」
「ん?今日ね、オリオン座流星群が見られるの。
ほら…ここって、明かりも視界を邪魔する物も何もないから、よく見えるかなと思って。」
「オリオン座…流星群…。んだよ。」
「あ…。もしかして、うち着た?あたし居なくて探してくれたの?」
「べ…別に、そおゆうんじゃねーよ。
なんか、眠れねぇから散歩してたら…ここにお前が居た。」
苦しい言い訳に、頬を赤く染めながらプイッと顔をそらした。
「そっか。なら、ナツも誘えばよかったね。ごめんね。」
珍しく、歯切れ悪く話すナツに…何かを感じたのか、ルーシィは申し訳なさそうにそう呟いた。

「クシュンッ…。あぁ〜結構着込んで来たのに寒いわね。」

ルーシィを見下ろすと、
羽織っていた毛布をギュッと握りながら震えている。
おもむろに、その毛布を剥ぎ取って、自分の肩に羽織り、
ドカッとルーシィの背後に腰を降ろす。

「ちょっ!さっ…寒いじゃない!!毛布返してよ!」

そう、いつも通り喚くルーシィに少しだけ安心し、
ルーシィを膝の間に挟み、背中から抱え込むように毛布で包んでやる。
「この方が暖ったけえだろ?」
と、耳元で囁いてやると、ビクッと細い肩が揺れ、固まった。
…が、すぐに呆れたような声で、
「そうね。ナツだものね。うん。暖かいわ。ありがとう。」
と、溜息混じりに声が返ってきた。

そのままルーシィは後ろに体重を傾け、
ナツに寄り掛かる形で、星空を仰ぎ見た。

「ナツ…。
あそこに在るのがオリオン座。あの辺り見てると…ほら、流れた。」



後ろから抱きしめるって、何かいいよね。

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あきゅろす。
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