小説 (短編・中編)
ORION(1)
我慢しなくていいんだ…
涙を隠さなくていいんだ…
『弱さを見せない事が、強い訳じゃない。』
そぅ…君が教えてくれたから。

ーORIONー

『ナツ。ナツはもぅ…大丈夫よね?』
『何だ…突然…』
『うん…。リサーナは戻って来たんだから、もぅ…身代わりは必要ないよね?』
『は?身代わり?…何言ってんだ…ルーシィ?』
『ナツ。…さようなら。』
『おい!待て!!待てって!ルーシィ!!!』
足がもつれて上手く走れない。
『待て!オレを置いて行くな!ルーシィ!!』
手を伸ばしても君に届かない。
『うぁぁぁぁぁぁ!!!!』
暗闇に消えて行く小さな背中に、悲痛な叫び声が飲み込まれていく…

「はぁ…はぁ…はぁ…。夢…か…?」

なんて不快な夢だろうか。
嫌な汗が背中を伝う。
ドクドクと血が逆流しているのがわかる。
小刻みに震える手を眺め、チッと舌打ちする。

「目…覚めちまった…」

時計を見ると、時刻は10時半を少し過ぎた頃。
今日は小説の続きが書きたいから…
と、早々に桜髪と青猫を追い出した部屋の主を思い描く。

「ルーシィ…まだ起きてっかな…」

こんな風に不安で、眠れなくなった時は、
あの花のように甘い香りと、心地の良い温もりが恋しくなる。

「うしっ。行くか。今日はルーシィを抱き枕にして寝る。」

そう呟くと、
スピスピと寝息を立てる相棒の青猫を起こさないよう、
そっと家を出た。



抱き枕ルーシィは、ナツの中で決定事項。


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あきゅろす。
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