小説 (短編・中編)
小春日和(3)
(オレも…眠くなってきたな…)

華奢な白く剥き出しの肩に頭を乗せ、目を瞑り耳を澄ますと、
遠くで囀る鳥の鳴き声や、木々を揺らす風の音、湖面を揺らす波の音…
様々な自然の子守唄のような音色が聴こえてくる。

しかしそれら全ての音を意識から消し、己の周りだけに集中すると…
スゥスゥと金髪の少女と相棒の穏やかな寝息以外、
何も聴こえなくなった。

(世界でオレらだけになったみたいだ…)

もう一度ギュッと腕に力を込め、
金髪の少女との間にある隙間を埋めるかのように、ピッタリと寄り添う。
自身の体温が彼女に移り、
抱きしめた当初はひんやりしていた華奢な身体が
暖かくなっている事に気付くと、心がじんわり暖かくなり、
自然と笑みが零れた。

(この…胸の辺りがホコホコする感じ…なんて言ったっけなぁ…)

互いの体温が行ったり来たり。
このまま溶けてひとつになれればいい。

もっと…もっと…ルーシィを感じたい。
もっと…もっと…ルーシィと繋がっていたい。

ルーシィを離したくない。

ルーシィがいれば。
ルーシィがいるから。

色褪せていた日常に、鮮やかな色が付いた。
真っ暗闇だった世界に光が射した。

(ん〜。あぁ…そうか。『幸せ』なんだな。)

そうして桜髪の少年は意識を手放した。

頬を撫でる風はもうひんやりと冷たいけれど、
こうして身を寄せあえば、暖かい。

そぅ。ふたりでいれば、そこはいつも春の日溜まり。
まさに、小春日和。

〈END〉



あれ?ナツがメルヘンになっちゃった…。おかしいな…。

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あきゅろす。
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