小説 (短編・中編)
小春日和(2)
そっと…そっと…。足音と気配を消しながら。
静かにターゲットの背後から忍び寄る。

5m…3m…1m…。

徐々に距離を詰めて行く。
あと少し…あと少し…。
手を伸ばせば、すぐに華奢な肩に触れる事のできる距離になった。

相棒と目配せをして、思い切り息を吸い込む。
…が、なんだか思っていた様子と違う事に気付き、
そのまま息を飲み込んだ。

「んぁ?」

夢中になって大好きな小説を
一心不乱に読み耽っているのかと思っていたその人は、
読みかけであったのであろう小説が、
力なくダランと地面に投げ出されている左手と一緒に足からずり落ち、
更に頭はコックリコックリと船を漕ぐように揺れていた。

突如、息を飲み込んだ桜髪の少年を不思議そうに見上げてから、
青猫は下から金髪の少女の顔を覗き込んだ。

「ナツぅ。ルーシィ寝てるよ。」
「だな。」
「どおするぅ?」
「ん…。」

スゥスゥと規則正しい、気持ちの良さそうな寝息が聞こえてくる。

「このまま、もう少し寝かしてやろうぜ。」
「うーん。でも、このままだとルーシィ風邪ひいちゃうよ?」
「だな…。」

まだ昼過ぎで太陽が出ているとはいえ、季節はもう秋。
頬をなでる風はひんやりと冷たい。

(しゃーねーなぁ。)

少女の手から小説を取り上げ、鞄の上に置いてから、
桜髪の少年は両膝の間に少女を挟み、
背中から抱え込むようにそっと抱きしめた。

金髪に顔を埋め、思い切り息を吸い込むと、
魅惑的な甘い香りに、脳の奥が刺激される。
クラクラとこのまま溺れていきそうな感覚に襲われ、
意識を浮上させようと、
金髪の少女のお腹の前に回した腕に…キュッと力を込め、顔を上げた。

「くふふ。ナツ〜幸せそうな顔しちゃって。」
と、目を三日月にした相棒が愉しそうにからかってくる。

「うるせぇ。
こうしてればルーシィも寒くねぇから、風邪ひかねぇだろ。」
と…口を尖らせながらボソリと言いやる。

火竜である自分の暖かい身体で抱きしめててやれば、
金髪の少女も寒さを感じず、風邪もひかないだろう。
との、考えからの行動なのだが…

「ぐふふ。ナツ顔真っ赤(笑)」
「う…うるせえよ。あんましゃべんなよ。ルーシィ起きちまうだろ。」
「はいはい。…ふぁぁ。なんか…オイラも眠くなってきちゃった…。」
そう言いながら、青猫は少女の膝の上へ登り、クルリと丸くなり、
クゥクゥと夢の中へと旅立っていった。



なっちゃんデレターン。



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あきゅろす。
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