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さん
 
「……はぁ、あ、あっ」
 梯子を降りてすぐに牢が見えるわけではない。
 いくらか通路があって、身を潜めるなど簡単な事だった。

 惣次がひどく葛藤している間も、藤太の甘い喘ぎはやむことがなく、ちゅくちゅくと粘着質で濡れた音が響いてくる。

 一体どんな顔をしてむせび泣いているのだろうか。
 あの兄が、どんなふうに――。

 惣次は恐々牢へと歩を進めた。
 通路の角からそっと牢を覗き込む。
 木枠の向こうに、兄の姿がある。奥の壁にもたれ、脚を開き、その間で彼の手が妖しくうごめいていた。
「んっ、ん……ふぅっ」
 片手で陰茎を扱き、もう片方の手ははだけた着物の袷の中に潜り、そこに隠れた胸の飾りを弄っているのだろう。

 惣次は、悩ましげに眉根を寄せ桃色に上気した藤太の顔に心奪われた。
 ごくり、と生唾を飲み下し、自身の中心も熱を帯び始めていることに気が付いた。
「あ……あ、ん」
 扱く度に皮がめくれ、綺麗な色をした亀頭が顔を覗かせる。そこは露に濡れ、てらてらと光っていた。

(兄……さん)
 惣次の雄は、触りもしないのに今やかちかちに張り詰め、褌の中で窮屈そうに脈打っていた。
 痛みすら覚えて褌をずらしてやれば、勢いよく飛び出して、天を突くほどに勃起して先走りを滲ませている。
 兄のものとは色も大きさも違う。
 惣次は自ら陰茎を握りこみ、緩く上下に扱くと、息が詰まる程の快感に襲われた。
(兄さん……兄さん……)
 格子の向こうでは藤太の喘ぎと手淫の水音が絶え間無い。
 惣次はそれだけで抜けそうだと思った。
 兄の自慰行為に自分自身を勃起させていることに滑稽さを感じはしたが、止められるものではなかった。

「んっ、うっ、んんっ……!」
 藤太の声が尚熱を帯び、手の動きが早くなる。惣次もそれに合わせた。上がる息を押し殺し、一心に自身を扱いた。
「あっあっ、いいッ、も、出る……!」
(はぁ、はぁっ)
「あっ、あン、あっ、んっん……!」
(にいさ……!)
 惣次も自身を絶頂へと追い込んだ。

 やがて間もなくその瞬間はやってきた。
「あっはっ、はぁっあぁ、っ……惣次っ!」
(……!)

 同時に、ふたりは精を吐き出した。
 

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