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じゅうに
 
 絡めた藤太の汗と精液に塗れた指が、力いっぱい惣次の掌を握り返してくる。
 過ぎた快楽は苦痛にも似ているのか、淫を突くたび藤太の喉からは切羽詰まった喘ぎがほとばしった。

「ひっぁ…あっ!だっ、駄目、もう…っ、あぁんっ、あっ!」
「はっ、はぁ、はぁ…」
「い…、イかせて、惣次っ、あふっ、あっあっ…!お願……っ!」
 さすがに後ろを犯されただけでは射精は叶わないらしく、切なく懇願する。
「う、…僕も…っ」
 惣次もそろそろ限界が近い。
 爪をたてる藤太の手を振りほどき、雫を垂らしながら突き上げに合わせて揺れる陰茎を握りとめた。
「あっ、くぅっ!惣……っ」
 握ってすぐ、勢いよく扱きあげる。にちゃにちゃと愉悦の音を響かせて、藤太の雄が一際体積を増した。
「あッ、や…っ、あっ、あンっ!イく、イっちゃ…っ!」
「兄さん…っ」
「あァっ……――――っ!」
 一瞬ずくんと脈動し、藤太の雄は三度目の精を吐き出した。
 同時に後孔が収縮し、締め付けられた惣次の雄も、こらえきれずに藤太の中へ白濁をぶちまけた。

「は、はぁ、はぁ」
「兄、さん……」

 体力を使い果たし、ふたり繋がったままで折り重なるようにくずおれる。

 こんなにも情事にのめり込むなど、惣次は思いもよらなかった。
 頭の隅がじんじんと痺れるようで、たまらなく心地いい。

 自分の下でいまだ整わない呼吸を繰り返す兄の髪を撫で付けながら、惣次はぽつりとひとつの考えを口にした。
「兄さん……、一緒に、この村を出ませんか」
 その言葉に、藤太の肩がぴくりと揺れる。
 その肩をそっと撫でて、惣次は苦しげに眉をひそめた。
「この村にいるから兄さんは……」

「わたしは……」

 ぬるい風が、牢の中に吹き込んだ。

「兄さん、僕と一緒に」
「行かない、と言ったら……?」
 畳にうずくまった藤太の小さな呟きに、惣次は息をつく。
 拒否は多少予想していた。
「何故です兄さん」
「お前、わたしをここから連れ出して……どうする。どうしたい」
「どうって……」
 問われて咄嗟に浮かんだのは、夜毎兄を組み敷く自分の姿だった。

(なっ……)

 

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あきゅろす。
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