●小説● E 「まったく…」 職員室からちょうど、校門でいちゃつく男女が見えた。 教頭がため息をつく。 「青春だねぇ…」 隣で校長が穏やかに笑う。 「ほんとに…考えなしで。でも…愛する人のために夢まで諦めるなんて、心の奥に響くものがありますね」 「おや、らしくない」 校長がからかう。 「恥ずかしながら、若い頃を思い出されましたよ。私にもあんな頃があったなぁと」 「ははっ…じゃあそろそろわたしは行ってきますね」 校長が立ち上がる。 手には辞表と書かれた紙と退学書。 「それは…」 「校門でいちゃつくな、と注意を。ついでに目の前でこれを破いてやりますかな」 「素敵なこと…まぁどうなっても私は知りませんよ」 教頭の最後の一言だけが冷たかった。 校長は苦笑して、 「なんとかなるでしょ」 学校の教師だ、生徒だという前に、 一人の人間なのだから。 恋もする。 先生と生徒だって恋をする。 それもひとつの恋だから。 あなたは恋をしていますか? end [*前へ] [戻る] |