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●小説●
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一週間後。

Tシャツにジーンズというラフな格好で校門を出ようとする先生がいた。

表情は明るい。

校門を通り過ぎようとした先生の歩みが止まった。

目を見開く。

目の前には、同じく目を丸くした笑佳がいた。



「せ、せんせ…なんで?学校は?」

すごく驚いた。

平日なのに、先生が私服でこんな所にいる。

対する先生も驚いた顔で、

「え、笑佳こそ…私服で何して…」

えみは涼しげな花柄のワンピースを着ている。

「先生、えみね、学校やめたの!」

「はああ!?」

予想通りの反応にえみは嬉しくなった。



「だからね、先生…」

「俺も、もう『先生』じゃない」

「えっ!?」

次はえみが驚く番だった。

その顔を見て先生が笑う。

「先生、先生辞めてどーすんのぉ…」

「笑佳こそ…中卒なんて、就職できねーぞ。よく親許したな」

えみは笑って、自慢気に話した。

「保育園の先生は諦めた!えみの可愛さをもってすればモデルでもアイドルでもなれるしね」

「確かに」

くくっ…と先生は笑う。

「親は許してくれたよ。好きな人がいるのって言った」

「そんな理由!?よく許したなぁ」

「お母さんも娘のこと言えないもん。お父さんに一目惚れして、親が許してくれないから駆け落ちした人なの」

えみも同じような人生を辿ろうとしてるよ。

絶対後悔しない。

だって、えみは先生のこと大好きだもん。

お母さんも家を飛び出してお父さんと一緒になったこと後悔してない。

むしろ幸せいっぱいだ。

「俺なんかでいいのか?」

先生が自信なさげに呟いた。

「俺なんかのために、夢諦めていいのか?」

「先生こそ。えみのために先生辞めちゃったじゃん」

「俺は笑佳が好きだからいいんだ」

「じゃあえみも先生が好きだからいいの」

先生がぎゅっと抱きしめてくれて、

ほんの少しだけ残っていた不安も吹っ飛んだ。

「先生…好き!」

「だから、もう先生じゃないって…好きだよ」



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