●小説●
B
生徒指導室に教頭と向かい合って座っている。
40代後半の女性は教頭だった。
険しい表情をしていて怖い。
「梶原さん、先生と仲がよろしいですね?」
「はい…よくお話します」
正直に答えた。
「あなたは大学に進学するおつもりですね?」
「はい。児童学を学びたいのです」
「それでは、先生との個人的なお付き合いは以後行わないこと」
淡々と言われたから、一瞬意味が分からなかった。
「先生と…」
「職員と生徒のお付き合いは好ましくありません」
「でも…」
「警察沙汰になる可能性もありますし、そうなると学校の質を落とす。あなたの進学も保障出来ません。何より、先生は間違いなく首ですね」
知ってる…何回も聞かされた。
でも…そんなのって。
「えみが…私が生徒だからいけないんですか?」
「社会人じゃありませんし、何より学校の尊厳が―――」
教頭はその後も長々と話した。
ふと気がつくと12:50をとうに10分も回っている。
「―――あ」
突然立ち上がったえみに教頭は驚いたが、
構うもんか。
生徒指導室を飛び出し、中庭へと急ぐ。
中庭は静かだった。
日が照っていて暑いので誰もいない。
先生も。
「せんせ…」
呟いたら一粒の涙が頬を伝った。
だが、それ以上は流れない。
噛みしめた顔を上げ、走り出す。
こんなのおかしい。
好きなのに、話せないだなんて。
好きなのに…
教頭はきっと先生にも同じようなことを言ったに違いない。
えみの進学のことを中心に。
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