●小説●
A
3限後、先生を見つけた。
「先生ー!」
笑顔で駆け寄る、が先生の表情が暗い気がする。
「せんせ…?」
「梶原…」
久々に苗字で呼ばれた。
きっと辛いことがあったんだ。
えみは元気付けようと、笑って、
「先生、4限終わったら一緒に昼食べよ?」
「いゃ、おれ…先生忙しいんだ」
声が重い。
「なんでー?」
えみは無理に明るい声を出す。
先生、落ち込んでちゃ損だよ、笑って。
なのに、
「うるさい…放っておいてくれないかな」
「―――!」
なんで。
どうしちゃったの?
先生。
えみのこと好きじゃないの?
去っていく先生に、震える声で、
「じゅ、12時50分、中庭のベンチで待ってる!!」
その声が聞こえたかはわからない。
お弁当を抱えて廊下を歩く。
いつもは楽しみな昼休みのはずなのに。
先生は中庭に来るだろうか。
ひとけのない静まり返った中庭を見るかもしれない。
それが怖くて自然と歩みも遅くなる。
「梶原さん」
不意に後ろから声がかかった。
「はい!?」
驚いて振り返ると、見たことあるようなないような…
40代後半の女性が立っている。
「ちょっと、いいかしら?」
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