☆お題小説☆ 「すき」の意味(高律) 本が好き。 晴れの日が好き。 ビールも好き(すぐ酔うけど)。 休みの日が好き。 仕事も、まぁ好き。 満員電車が嫌い。 雨の日が嫌い。 かみなりが嫌い。 修羅場のエメ編……ちょっと嫌い。 なんでも、好きと嫌いに分けられるのに。 高野さん。 この人だけは、どちらにも入らない。 分からない。 そもそも好きってなんだろう。 好意、愛着、信頼………。 「好きにも嫌いにも入らないもの?」 「は、はい!べ、別に深い意味はなく、なんとなく………」 エメ編最年長の木佐さんに尋ねてみた。 「それは……関心がない、とか?」 関心………。 「あ、でも、その人のこと考えてる時点で関心は大いにあるのかな?」 木佐さんがニコッと笑顔になる。 む、難しい……。 っていうか!!! 「人って……!!!俺、人っていいました?」 好きにも嫌いにも入らないもの、って聞いたのに。 「違うの?」 「……違わなく、ないです」 また木佐さんは笑顔を向ける。 「律ちゃんさぁ、大切なこと見落としてるよ」 「え……?」 「好きにも嫌いにも入らない………じゃあ“大好き”って選択肢は?」 それだけ言うと、さっと席を立ってしまった。 大好き……。 高野さんのこと、大好き……? 俺が、高野さんのこと、大好き。 何か、晴天の空を見上げている気分になった。 パズルの最後のピースをはめたときのような。 そうか、 “大好き” っていう選択肢もあるんだ。 ……… …… … いやいや、 「ないないないないなーい!!!」 だ、大好きなワケあるかぁ!!! 横暴上司、鬼の編集長、セクハラ魔。 あんなやつを大好きになんて…… 「なってたまるかぁあぁあぁ!!!」 小野寺律25歳。 10年前に生活が曲がって以来、 「好き」の意味が分からない。 「好き」の意味を教えてくれる人が、 近くにいることにも、 気づかないまま。 ――――――――――――― お題配布サイト 恋したくなるお題 様よりいただきました。 [*前へ][次へ#] [戻る] |