[通常モード] [URL送信]

☆小説☆
@
○君の名前

「律」

律、律、律。

高野さんが俺を呼ぶ。

何度も、何度も。

そばにいても。

「律」

「なんですか」

振り返ると、高野さんは微笑んでいる。

その表情にドキッとする。

「呼びたかったから呼んでみた」

「……用もないのに呼ばないでくださいよ」

あぁ、もう、なんで俺はいつもこうなんだ。

やっと素直になれて、高野さんに「好きです」と伝えて恋人になれたのに。

本当は名前を呼んでもらって嬉しいはずなのに。

「そのうちうっかり会社でも呼びかねないじゃないですか?」


「それならそれでいいじゃねぇか」

「ヤです」

あんなにギスギスしてたのに。

高野さんなんて嫌いだと公言してたのに。

男同士なのに。

こんな関係になっているなんて、絶対言えない。

「律」

「だから、用のある時にだけ―――」

振り返ろうとしたら、背中から抱きしめられた。

温かい。

嬉しい。

「高、野さ……」

「名前で呼んで」

耳元で囁かれる。

ズルい。

高野さんはいつもズルい。

俺は余裕なくて、必死で。

なのに高野さんは余裕で。

「ま、政宗さん……」

「うん。……もっと」

「政宗さん……」




[次へ#]

1/3ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!